課長、部長、役員……会社には明確な出世ラインがあり、サラリーマンにとってはその地位をあげていくことが一つの目標だといえる。一方で、芸能人にとっては何が“あがり”なのだろうか。古参の芸能記者はこう語る。
「人や分野、男女によっても定義が違いますから、なんとも言えないですね。そうはいっても、ある程度の形はあります。芸人だったら自分が司会の番組を長く続けることであり、俳優だったら主演ドラマで高視聴率を獲得する。これが目標でしょう。
しかし、いくら長寿番組になってもいずれ終わりはくる。自分が看板となっている番組で10年以上視聴率を取り続けたら、落ち始めたときに“凋落”と言われる。かつての萩本欽一がそうだったでしょうし、最近ならSMAPの木村拓哉も正念場かもしれません」
1980年代、自身が司会を務める番組の1週間の合計から、“視聴率100%男”の異名を取った萩本欽一(73)は、44歳になる直前にレギュラー番組をすべて降板。復帰後、数字は伸びず、時代は完全にビートたけし、タモリ、明石家さんまの“ビッグ3”に取って代わられた。インタビューなどで、本人は「30%取って、次は40%? 40%を毎週続けるのは難しいよ」とモチベーションを保つことの難しさを話している。
萩本はテレビバラエティの基礎を作った大御所である。その功績は認めつつも、一方でその大御所に対しても、世間は“古い笑い”と揶揄することも珍しくない。もし会社組織であれば、会長職にまで上り詰めているだろうが、そんな人物でも、芸能人であるがゆえに “一芸人”といつまでも見られ、70歳を超えても批判にさらされるのだ。
「芸能人ほど難しい職業はないでしょう。トップに立てば立つほど、周りはイエスマンだらけになるけど、その座から陥落すれば、手のひらを返したように人が去っていく。第一、人気ほど得体がつかめず、ふわっとしたモノはない。逆に言えば、だからこそ、人は芸能界に関心を持つのかもしれません」(同前)
“あがり”が見えない職業だからこそ、芸能人への興味は飽き足らないのかもしれない。