中国の最高指導者、習近平国家主席が汚職などの腐敗撲滅を叫ぶなか、習氏の権力基盤ともいえる中国人民解放軍内で腐敗が蔓延しており、昨年1年間だけで、汚職や軍紀違反などの容疑で760人以上の佐官級幹部を含む4万5000人の幹部が処分されていたことが分かった。軍機関紙「解放軍報」(電子版)が報じた。
また、同紙は1面で「軍総部は『舌上の浪費』を絶つ措置をとる」との見出しを掲げて、軍内の「ぜいたく禁止令」違反を厳しく取り締まる措置を発表しており、習近平指導部が軍内の腐敗蔓延に手を焼いていることがありありと分かる。
同紙(電子版)の記事は6月18日、「軍は腐敗分子を絶対に見逃しはしない」という見出しで、ニュースサイトのトップ記事として掲載された。
記事は冒頭、「430年あまり前にヌルハチが兵を起こして、女真族を統一した」と書くなど、明代(1368~1644年)にまでにさかのぼり、明朝が版図を拡大しながらも、清朝(1644~1912年)に滅ぼされたのは「将官が不正蓄財に励み、士卒は命を惜しむなど、軍内で腐敗が骨髄までしみこんでいたためだ」と指摘。その清朝も西洋列強に浸食され、日本との戦争に敗北したのも腐敗が原因で、明の教訓を生かせなかったと喝破。
中国共産党は数々の歴史の教訓から軍隊の腐敗を非常に憎んだとして、共産党が国民党に勝ったのは、腐敗に染まっていた国民党に比べて、共産党が清廉だったからだと結論づけた。
ところが、2012年の第18回党大会後、習主席が党や政府、軍内の腐敗撲滅を打ち出して以来、軍内でも多くの腐敗分子が処分されているとしたうえで、「腐敗分子を取り除いてこそ、軍は一層清潔になり、戦闘能力が高まり、強軍の目標の成果がさらに拡大する」などとして、「軍は腐敗分子を絶対に見逃しはしない。これは気概であり、責任であって、共産党と人民に対する忠誠である」と締めくくっている。
解放軍報が電子版といえ、これほど軍内の腐敗撲滅を声高に訴えるのは極めて異例。それだけ、軍内における腐敗蔓延がかなり深刻化していることがうかがえる。
さらに、18日付同紙は1面で、「舌上の浪費」という珍しい表現を用いて、勤務中の飲酒や会議に名を借りた贅沢な会食がいまだに行なわれているとして、習指導部が打ち出した贅沢禁止令が守られておらず、軍用車としての外車の使用禁止や官舎や公用車の不正使用、ずさんな会計審査による公金の横領など腐敗がはびこっている実態を明らかにしている。
中国でこのところ、総後勤部副部長や海軍副司令員ら最高幹部が腐敗で逮捕・起訴されているほか、軍内ナンバー2だった軍事委副主席経験者2人が腐敗容疑で身柄を拘束されたと伝えられるなど、軍の腐敗は党以上に深刻とみられている。