FIFAワールドカップブラジル大会・グループCの第3戦の相手はコロンビア。日本のFIFAランキング46位に対し、8位とかなりの強豪だ。コロンビアの他にも開催国のブラジル、アルゼンチン、ウルグアイと強豪国がひしめく南米勢は、日本サッカーが最も苦手とする相手である。代表戦ではW杯を含め敵地で一度も勝っていない。
近年の日本はベルギーなど強豪の欧州勢には勝つことがあるのに、南米にはなぜ歯が立たないのか。それを解明しない限りコロンビア戦の光明は見えてこない。
元日本代表で、JFA公認S級コーチの資格を持ち、現在はオランダでコーチを目指している藤田俊哉氏が、欧州の現状と南米の特徴を比較しながら語る。
「確かに欧州サッカーもスピードや個人技のレベルはかなり上がってきています。しかし南米は、これに加えて選手個々の判断で駆け引きできることが大きい。
例えば、相手の裏をかくために日本がこれまでになかった奇策を立てて攻撃したとします。欧州はこれに組織で対応しようとしますが、南米、特にブラジルやアルゼンチンといった強豪国の選手は個々の判断で動く。だからあっという間に対処されてしまうのです。一言でいえば試合運びがうまい。よくサッカーを知っています」
そこに南米の強さの秘密が見えるという。
「予想外の攻撃にも対応できるということは、ディフェンス能力が非常に高いということ。南米のサッカーは攻撃力が凄いといわれますが、実際にやってみて僕が感じたのはディフェンス能力。そこをよく理解せずに対戦し、とにかく攻撃を止めれば勝機がつかめると考えてしまい、結局イメージの違いに戸惑うことが、敗因の1つになっているのではないでしょうか」
南米=攻撃的という「先入観」こそが苦手の原因なのか。確かに日本のマスコミでは、よく「南米は攻撃中心」「攻撃的で典型的な南米スタイル」といった表現を使う。元東京新聞記者で、サッカージャーナリストの財徳健治氏も、「南米は攻撃重視といった、判で押したような勝手な思い込みが敗北を招いている可能性が高い」と同意する。
近年は南米の強豪国ほど、攻撃ばかりのサッカーをするわけではない。特に、メッシが幼い頃からバルセロナ(スペイン)に入団したように、優秀な選手は早い段階で欧州のクラブに所属し、組織的な守備をたたき込まれている。そこに元々持ち合わせている南米特有のテクニックが加わるため、難敵となるのではないか。
※週刊ポスト2014年7月4日号