「総理は外務省不信が強く、信用しているのは斎木次官と外交ブレーンの谷内正太郎・国家安全保障局長くらい。外務省は官邸に『次官を韓国に出しても意味がない』と反対したが、総理は『じゃあ外務省は何のために存在しているんだ』と言って聞かなかった」(外務省幹部)
しかし、斎木訪韓は完全な失敗に終わる。斎木氏は当初、3月12日から2日間の日程で訪韓した。韓国側が夕食会を用意すると伝えてきたからだ。だが、趙太庸・外交部次官との交渉がいきなり決裂し、夕食会もドタキャンされ、「怒った斎木氏は日本への最終便の出発時間を遅らせて急遽、その夜のうちに帰国した」(同前)のである。
結局、安倍首相は米国の圧力に屈しきれず、3月14日の国会答弁で河野談話見直しについて、「安倍内閣で見直すことは考えていない」と撤回し、慰安婦に対して「筆舌に尽くし難いつらい思いをされたことを思い、非常に心が痛む」と謝罪に追い込まれた。頼みの綱の斎木氏が失敗すれば安倍首相は何もできずに謝るしかなかったのである。
※SAPIO2014年7月号