生涯のうちにがんに罹患する割合は、男性で60%、女性で40%にのぼり、がん罹患者数は年々増え続けている。一方で治療や検査技術の進歩により、がん患者の5年生存率は50%を超えた。そうした現状で、がんにかかった後も働き続けることは、がん患者にとって極めて重要な問題になっている。
がんになった時への備えとして、がん保険に加入している人は多いだろう。だが、そこには意外な落とし穴があるのだ。がんになり、支払われると思っていた保険金が支払われないケースが報告されている。
A子さん(42才・主婦)の夫(45才)は人間ドックで肺がんが見つかった。幸い、初期の段階だったが、抗がん剤治療のために会社を退職。当面の生活資金としてあてにしたのが、退職金と長年かけ続けてきたがん保険だった。
「入院1日につき1万円と、がんと診断された段階で一時金が100万円もらえるはずでした。『ああ、がん保険に入っておいてよかった』と思いましたよ。ところが、保険会社の人は『保障の対象外なので保険金は払えない』と言うんです」(A子さん)
夫のがんは「上皮内新生物」と呼ばれるごく初期のがんで、たしかに保険会社の担当者が約款で指し示した場所には、「対象外」とあった。
「だけど、保険に加入した時は、そんな説明は一切されていなかったはず。あんな小さな字で書かれていても、気づくはずがありません」(A子さん)
保険金が支払われないケースは他にもある。ファイナンシャル・プランナーの恩田雅之さんが解説する。
「がん保険には免責期間が90日間あり、保険に加入してから91日以上たたないと、がんと診断されても保障を受けられません。また、最初の病歴告知が間違っていると、後で保険金が出ない場合があるので、病歴告知は正確にしておく必要があります」
実際に「告知義務違反」と指摘され、保険金が給付されなかったと話すのは、Bさん(50才・男性)だ。胃がんになり、入院して切除手術を受けたが、給付金を受け取ろうと保険会社に書類を提出すると、
「担当者に『過去に胃潰瘍で受診し、薬を処方されたことがありますね』と言われました。大した症状じゃなかったし、書く必要はないと思っていたんですが…。『だったら、加入する時にそういってくれ』と反論しましたが、担当者は『あなたの落ち度』の一点張り。結局、契約解除になって保険金はまったくもらえませんでした。これまで払ってきた保険金も戻らず、本当に泣くに泣けませんでしたよ」(Bさん)
加入時の申告ではごく簡単な質問しかないのに、いざ保険金を給付する時になって厳しく審査されるというケースは少なくないのだ。保険によっては入院しなければ保険金が出ないもの、再発したがんには保険金が出ないものもある。
「これだけ多くの人ががんになる時代で、がん保険が破綻せずに成り立っているのは、“がんになっても保険金を払わない”カラクリがいろいろあるからなんですね…」
※女性セブン2014年7月3日号