6月11日の甘利明・経済産業相、田村憲久・厚生労働相、菅義偉・官房長官の3大臣会合で「年収1000万円超」の準管理職のサラリーマンに残業代ゼロを適用すること(ホワイトカラーエグゼンプション)を合意し、6月末に発表する「新成長戦略」に盛り込む方針だ。
この残業代ゼロ制度で特に許し難いのは、民間サラリーマンにリスクを押しつけようとしている役人たちは、このホワイトカラーエグゼンプションが実施されても痛くも痒くもないことだ。
理由は単純明快。国家公務員には、今も原則として労働基準法が適用されず、スト権などの労働基本権が認められていないかわりに、強い身分保障と特権が与えられているからである。その一つが残業代だ。
元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授が語る。
「霞が関の行政職の官僚は全員、労働時間規制の対象外で、いわばすでにホワイトカラーエグゼンプションが適用されているようなものだが、残業代は出ます。しかも、超過勤務手当の予算総額は決まっているから、個々の職員が実際に残業した時間ではなく、忙しい部署の職員には多く、そうでない部署には少なく配分される。私が忙しい部署にいた時、1人だけ仕事を早く処理して先に帰宅しても残業代がついていました」
残業しなくても残業代がもらえるとしたら特権というより“公金横領”だろう。
人事院規則では国家公務員のうち「係長」以上の約7万人が「管理職員」とされているが、管理職員になっても課長補佐まで残業代が支給される。
官僚の肩書きと権限の大きさは民間企業とはまるで違う。キャリアの課長補佐は年齢は若くても地方の警察署長や税務署長、市役所に出向すれば部長クラスに就任する。年収も30代後半の東京勤務の課長補佐の場合、妻と子供2人のケースで扶養手当、本府省業務調整手当を足して計算するとおよそ900万円になる。
それに加えて支給される残業代は、国家公務員全体で昨年度の約1428億円から今年度は約1539億円へと予算8%増の大盤振る舞いがなされている。
キャリア官僚の年収が民間サラリーマンにホワイトカラーエグゼンプションが適用される1000万円に届くのは40歳前後の本省の室長時代だ。課長になると年収も約1200万~約1300万円になる。
人事院給与第三課は「室長や課長には民間の管理職手当に相当する調整額手当があるため残業代は出ません」と説明するが、その手当は室長が月額9万4000円、課長は月額13万300円と手厚いうえ、休日出勤すればしっかり「管理職員特別勤務手当」(勤務1回につき上限1万8000円)がつく。
※週刊ポスト2014年7月4日号