「しゃがもうとしても膝が痛くて曲がりきらない」「両腕を同時に真っ直ぐ伸ばして上げることができない」──関節が硬くなり、足腰の弱った高齢者にはありがちな症状だが、近年こうした異常が子供に見られるようになっている。
ロコモティブ・シンドローム(ロコモ症候群)とは、立つ、歩くなどの日常の基本的な動作が困難になり、要介護や寝たきりになった状態、あるいはそうなる危険性の高い状態を指す言葉だ。運動器の機能障害のために移動能力が低下した状態である。加齢とともにそうしたリスクと向き合っていかなければならないのはある程度仕方ないことだが、驚くことに最新の研究では小中学生にも「子供ロコモ症候群」と呼べる症状が報告されている。
警鐘を鳴らすのは、宮崎大学医学部整形外科の帖佐悦男(ちょうさえつお)・教授。
「宮崎県の小中学生を対象に運動器の機能をテストしました。『かかとをつけた状態でしゃがみ、静止することができるか』といったチェックを行なったところ、うまくできなかった子供が全体の約1割もいたのです。しゃがんでいる途中で後ろに転げてしまう。ロコモ症候群につながることが懸念される状態であり、極めて深刻です」
帖佐教授が行なった調査は、宮崎県内の小中学生8738人を対象としたもの(2012年)。前述の「しゃがみ込みテスト」などの結果、骨や筋肉、関節などの運動器に「異常あり」と判定された子供は1123人(全体の12.9%)にものぼった。軽度の異常が認められた子供も含めれば、全体の2割以上が何らかの問題を抱えていたという。
※週刊ポスト2014年7月4日号