『平成25年版 犯罪白書』によると、2012年に警察が認知した全国の強姦は1240件、強制わいせつは7263件だった。これを「氷山の一角」とするのは東洋大学社会学部教授(犯罪心理学)の桐生正幸氏だ。
「殺人など凶悪犯罪が減少するなか、強制わいせつは右肩上がりで増え強姦も減りません。性犯罪は被害届けを出しにくく、実際の被害件数ははるかに多いはずです」
性犯罪は衝動に駆られた突発的な犯罪ではなく、「計画的犯罪」であると前出・桐生氏は強調する。
「多くの性犯罪者は犯罪が発覚するリスクを恐れ、細心の注意を払って犯行に及びます。性的満足をより多く得られる方法を合理的に計画し、準備や下見を重ねるのです」
手始めはターゲット探しだ。彼らは駅近郊などで道行く女性を観察する“クルージング”を行い、条件にあった標的を定める。
「『薄着で肌を多く露出した若い女性が危ない』と思われがちですが、彼らは若く活発な女性は犯行時に激しく抵抗すると考えます。強制わいせつ罪や強姦罪は被害者の訴えが必要な親告罪(単独犯のみ)なので、犯人はできるだけおとなしそうな女性を狙います。被害者の選定について、『警察に届けないと思ったから』と供述する犯人は多いです」(前出・桐生氏)
防犯研究を行うステップ総合研究所の清永奈穂所長はコンビニに注目する。
「コンビニはガラス張りで店内が明るく、女性の容姿を物色しやすい。買物かごに入った弁当など食料から、ひとり暮らしの女性かどうか判断している。とくに夜中のコンビニでは『見られているかも』との意識が必要です」
犯人は標的を見つけたら尾行して自宅を割り出し、マンションの形態や郵便受けの中身、電気メーターの回転まで入念にチェックして、居住人数を確認する。さらに近辺に張り込んで観察を続け、標的の帰宅時間や施錠の有無、帰宅後に窓を開ける習慣があるかどうかまで調べあげる。
性犯罪者は犯行に及ぶ場所のチェックも欠かさない。前出・清永氏は、「犯人にとって近づきやすく、逃げやすい」場所が危ないという。
「通学や通勤で必ず使う道なら決まった時間に待ち伏せできるし、道路が交差して人目が少ない場所は逃げ道が多い。交番や地域パトロールがない場所は犯罪者にとって攻めやすいエリアです。駐車場や駐輪場など人気がない場所、人の出入りはあっても死角となりやすいマンションのエレベーターや階段の陰も要注意です」
罪状によって危険な場所が異なるというのは前出・桐生氏だ。
「強制わいせつは路地など屋外の暗やみで人気が少ないところが危なく、自転車で相手を物色して胸だけ触って逃げるようなケースもあります。より凶悪な強姦は野外、屋外での犯行は少なく、室内や車内など閉め切った場所が多い。歩行者を車で拉致したり、女性の自宅に侵入したりして犯行に及びます」
となると自宅は危険だ。並のセキュリティーなら性犯罪者は易々と突破してしまう。
「オートロックだからと安心して自分の部屋の鍵を施錠しない人がいますが、犯人は住人の後ろにスッとついて簡単に建物内に侵入します。4~5階だからとベランダの窓を開け放す人もいますが、樋(とい)を使えば簡単に上ってこられます。これから夏場ですが、女性のひとり暮らしはクーラーを活用したほうが安全です」(前出・清永氏)
※女性セブン2014年7月10日号