タクシー運転手の平均日収(1日の売り上げ)は4万円といわれるが、71歳にしてその倍の8万円を稼ぐカリスマドライバー・大塚功氏だ。なぜ大塚氏はそんなに稼ぎだすことができるのか。
大塚氏は東京・江東区議会議員を3期務め、一時は年商40億円の建設会社社長でもあったが、商売上のトラブルに巻き込まれて自己破産。56歳で運転手に転職する。それから15年、今では勤務先の大和自動車交通で、新人運転手向けの「儲け方講座」を受け持つトップドライバーだ。
まずは、大塚氏が新人に行なう講義を覗いてみよう。大塚氏はまずこう切り出す。
「1日の売り上げが4万円で満足するか、6万円に伸ばすかで、人生の決算は天と地ほど開きます。だから、知恵を絞って稼ぎなさい」
一般的な運転手の勤務は月に12回。2万円の差は年間約300万円の差になり、30歳から40年間務める人では1億2000万円。一般的に売り上げの6割が運転手の取り分として、7200万円も違ってくる。では、具体的なアドバイスはどのようなものか。
●目的のない流し営業はしない
「都内の場合、山手線のターミナル駅をベース拠点に、お客を降ろしたら、一番近くて必ず捕まえられる別のベース拠点駅を目指す。その移動はお客ゲット確率の高いコースを選ぶ。流しは移動の手段」(大塚氏)
●地域密着型は最悪、広域型営業を目指せ
遠距離のお客を降ろしたら急いで自分の地元に戻ろうとする運転手は多いが、これこそ愚策だと大塚氏は語る。
「長距離を空車のままで戻ってくるのは効率が悪い。降ろした先々でも、どこに行けばお客が拾えるか、営業エリア内のデータの蓄積が重要なんです」
●頭を使って知恵を出せ 知恵がなければ汗をかけ
自分なりの稼ぎ場を発掘するための情報収集は欠かさない。電車の終電時刻はもちろん、都内の大劇場の昼夜の終演時間、野球やサッカーなどの終了時間も頭に叩き込む。主な施設の2~3か月先までの行事日程を知らせてくれるFAXサービスもあり、取り寄せて頭に入れておくことも大切だという。
「情報が頭の隅にあれば、無駄な動きが減らせる。1000人規模のイベントでは約1割がタクシーを利用するので、それを逃す手はない」(大塚氏)
お得意様を捕まえる営業活動も大切だという。大塚氏の場合、馴染みの場所で、タクシーを通勤の足にしている人を探し、常に何人かキープしていたという。
●ロング狙いは御法度
「ロングかどうかは結局のところ運次第。仮に長距離客がいても都心まで戻るのに2~3時間かかれば、都心でこまめに乗車率を上げるほうが効率はずっといい。空車の時間帯を作らないことが大事なんです」(大塚氏)
タクシーは法律で一日走行距離365km以内、出庫から帰庫まで21時間以内と決められている。いかに空車走行をしないかが最大の勝負どころなのだ。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2014年7月4日号