安倍晋三首相が成長戦略の柱としてアピールする「女性が輝く日本」というキャッチフレーズ。女性登用についての施策の実態を探ると、年金財政の負担を軽くするため、安価労働力を確保するため、といった”お友達”の利益最優先の目的が透けて見えてくる。
安倍政権は主婦を働かせるためのパイロット事業『中小企業新戦力発掘プロジェクト』などに巨額の予算を投じた。政権発足直後に編成した総額約12兆円の緊急経済対策(2012年度補正予算)で約282億円の予算をつけたのだ。
これは結婚や出産を機に一度会社を退職した主婦を2週間~3か月間、中小・零細企業で研修させて職場に慣れさせ、再就職のきっかけにしてもらう事業で、インターンとなった主婦には国から1人1日最高7000円の技能習得支援助成金が支払われる。いわば外国人研修生の主婦版であり、企業側にすれば、国のカネ(税金)を受けながら研修ができるわけである。
しかも、実施方法がいかにも役人らしい。
担当の中小企業庁は予算をそっくり経産省の天下り団体「全国中小企業団体中央会」の基金に積んで事業を実施させているが、その中央会はインターンを希望する主婦と受け入れ先の中小企業をカップリングするために、全国9つの地域ごとにコーディネーター役の人材派遣会社(複数)を募集した。人材派遣会社の役目は参加する企業への説明会や主婦の募集、面接と派遣先の決定までと幅広い。
こうした専業主婦の労働市場への参入をビッグチャンスとみている人材派遣業界は大喜びだ。事務職の派遣を中心に事業展開する中堅人材派遣会社の経営者が語る。
「派遣業界はリーマンショック以降、市場が冷え込んでいたが、円安で輸出企業の業績が回復すると同時に派遣や請負の需要が高まってきた。これからは何といっても専業主婦。現在、1000万人いる第3号被保険者の主婦の半数はパートにも出ていない。
これから安倍政権の女性の社会進出政策で8割ぐらいが再就職を希望するようになると、新たに300万人もの労働力が供給される。派遣業界は3兆円産業から一気に倍増する可能性もある。業界ではいまのうちにどうやって主婦を囲い込むかの競争が始まっている」
要するに政府(中小企業庁)は天下り先に業務を丸投げし、天下り先はさらに人材派遣会社に全部おまかせなのだ。この主婦雇用のパイロット事業では、今年度、コーディネーターには総額で上限16億円の経費が支払われることになっている。企業も、研修を受ける主婦も、人材派遣会社も、みんな国のカネで潤うという税金ジャブジャブ事業である。
このパイロット事業を2年連続で受注し、“主婦特需”に食いこんでいるのが安倍首相と太いパイプを持つ人材派遣最大手の「パソナ」と、麻生太郎・副総理兼財務相のファミリー企業の1社「アソウ・ヒューマニーセンター」だ。