健康や美容、ダイエットに、さまざまな菌を生活に取り入れる「菌活」が人気でトレンドワードになっているが、今年の夏はその応用編「菌活鍋」に注目したい。“夏もキレイに疲れ知らずでいられる”と、漢方や栄養の専門家もすすめるのが、この菌たっぷりの鍋料理だ。
「暑くなって体温が上がると、人間は汗を出して体温調節をしますが、汗をかき過ぎると“気”が奪われて『気虚』になりやすいと漢方では考えます。気虚になると、活動のエネルギーが不足して、意欲が湧かず、座り方も斜めにだらんとなります。一方で、現代、冷房環境が整っているからこそかかりやすいのは、“水はけ”が悪くなって起こる『水毒』症状です。むくんでくつ下の跡が残りやすい、舌の両脇に歯型が残りやすい人は注意しましょう」
そう話すのは、日本大学医学部漢方医の上田ゆき子さん。猛暑だった昨年は、10月に気温が下がってから、受診者の数が急増したという。ほとんどの人が、夏疲れの体を抱え、温度が変化したときに症状が強く出た。うち、約7割の人に胃を暖めるように指導したところ、症状が改善した。
「水毒で胃のあたりに水がたまると消化液がうすまり、消化が進まず、食欲が落ちると冷たいものばかり食べるという悪循環に。胃がちゃぽちゃぽとしている人は、夏こそ、鍋料理のような温かい食事を食べて体全体を温め、水の巡りを改善して、水はけを良くしましょう。夏の食材の多くは、体を冷やすものですが、熱することで冷やし過ぎることはなくなります。また、きのこは、気の不足を補う働きがある食材です。体の熱に対して熱でも寒でもない平の性質があり、加熱すれば“熱”の性質が出ます。たっぷり入れると、なおいいでしょう」
ちなみに、「菌活鍋」に適した「菌活食材」は、体に気力を与え、『気虚』を緩和してくれるきのこ類、胃腸の調子を整える作用が期待できて『水毒』対策にもなる麹、辛味が発汗を促し『水毒』を抑えるキムチ、体を温める作用がある納豆、同じく大豆を発酵させたもので『熱』の食材であるみそなど。
また、管理栄養士で、アンチエイジングレストランRireのオーナーシェフでもある堀知佐子さんはこう話す。
「夏バテしない体づくりの第一歩は、腸内環境を整えて、免疫力を高めることから。ヨーグルトの菌が腸内環境を改善することは知られていますが、発酵食品の菌もいい働きをします。また、“菌”と書いて、“きのこ”と読むきのこ類ももちろん『菌』。とくに免疫力を高めることがわかっているβグルカンという機能性成分を多く含み、善玉菌のえさとなります。食物繊維も豊富ですから、腸の調子が整えられ、いいうんちが出やすくなります」
きのこは夏バテにも、夏太りにも頼りになる食材。身近で、毎日でも食べやすい上に、“うまみ”があるので上手に使いたい。きのこのたっぷり入った「菌活鍋」で体調を整え、うまく夏を乗り切りたいものだ。
家庭でも作れる「菌活鍋」のレシピを堀さんに教えてもらった。
【あっさり酸辣湯(サンラータン)鍋】
■材料(4~5 人分)
白いシメジ:100g、ブナシメジ:50g、マイタケ:50g、キクラゲ(戻したもの):40g、大根:150g、豆腐:200g、ニンニク:2g、ショウガ:20g、長ネギ:40g、水:500cc、昆布:5g、酒:50cc、醤油:50cc、酢:50cc、砂糖:小さじ1、ニラ:30g、ラー油:少々
■作り方
(1)きのこ類は石づきを外し、食べやすい大きさにほぐす。(2)大根は短冊、豆腐はサイの目に切る。(3)ニンニク、ショウガ、長ネギはみじん切りにする。(4)鍋に水・昆布・酒・醤油・酢・砂糖を入れる。(5)4 が沸いたら、1、2 とザク切りしたニラを入れてラー油をまわしかけ、具材に火が通れば3 をトッピングして出来上がり。
【きのこと夏野菜の冷製ガスパチョ風】
■材料(4~5 人分)
マイタケ:100g、エリンギ:50g、ヒラタケ:50g、なす:1 本、赤ピーマン:1 個、ピーマン:1 個、キャベツ:200g、ニンニク:2g、タマネギ:30g、鷹の爪:小2 本、オリーブオイル:大さじ1、トマトジュース:500cc、味噌:50g、だし汁:300cc
■作り方
(1)きのこ類は石づきを外し、食べやすい大きさにほぐす。(2)なす、ピーマン、赤ピーマンは一口大に切り出す。(3)1 と2 を180℃の油で揚げる。(4)キャベツは2cm幅に切り、レンジにかけ(600W・3 分)、冷ましておく。(5)ニンニク、タマネギはみじん切りにする。
(6)鍋にオリーブオイル、種をとった鷹の爪、5 を入れ、弱火にかけ、タマネギに火が通ったら、だし汁、トマトジュース、味噌をときいれる。(7)ガラス鍋に1、2、4 を入れ6 を注ぎ、出来上がり。