「しゃがもうとしても膝が痛くて曲がりきらない」「両腕を同時に真っ直ぐ伸ばして上げることができない」──関節が硬くなり、足腰の弱った高齢者にはありがちな症状だが、近年こうした異常が子供に見られるようになっている。
ロコモティブ・シンドローム(ロコモ症候群)とは、立つ、歩くなどの日常の基本的な動作が困難になり、要介護や寝たきりになった状態、あるいはそうなる危険性の高い状態を指す言葉だ。
なぜ子供ロコモがそんなにも広がってしまったのか。宮崎大学医学部整形外科の帖佐悦男(ちょうさえつお)教授は生活習慣の変化を挙げる。
「携帯ゲームやインターネットが普及し、体を使った遊びが急速に減っています。また生活スタイルの洋式化によって畳の部屋や和式トイレがなくなり、現代の子供たちは普段の暮らしの中で筋肉や関節を動かす機会が減っている。
学校生活にも課題があります。小学校では高学年の生徒に『低学年の子が使えないから、水道の蛇口をきつく締めるな』といわざるを得なくなっており、運動器を鍛えない生活スタイルに拍車をかけている」
布団や畳から起き上がる、1日に何回かは和式トイレでしゃがんで用を足す──そうした何気ない動作がロコモ予防につながってきたというのだ。
ただし反対に運動の「やり過ぎ」が原因で運動器に異常をきたしている子供も見つかったという。
「子供たちの1週間の運動量を調べた結果、週15時間以上運動する子供とほぼ全く運動しない子供が多かった。極端な二極化が進んでいるのです。運動が足りない子供は肥満や筋肉の衰えが問題となり、運動過多の子供は四肢や脊柱にスポーツ障害を引き起こしてしまう」(帖佐教授)
少年野球やサッカーのみならず、幼い頃からのスポーツ英才教育も増えてきた。運動器が未発達の状態で子供に過度の負荷を課してしまうことが子供たちの骨や筋肉、関節に悪影響を及ぼしているという。
※週刊ポスト2014年7月4日号