今の現代劇で僕が気になるのは、台詞が切れてないから聞こえないことが多いことです。その方が生活感のリアリティがあって、一音一音きれいに聞こえることはリアリティがないと捉える場合が多くなりました。ただ、三島由紀夫さんにしろ、シェイクスピアにしろ、台詞はちゃんと書かれているのですから、その言葉をはっきり客に伝えるのが役者のやるべきことではないでしょうか。お客さんに届いて初めて台詞だと思います。

 ですから、感情を込め過ぎてもいけません。叫んで喉を使ったりすると必要以上の力がその声に伝わって声が割れて、音として独立して聞こえてこない。あくまでクールに言葉を伝えていかなきゃいけない。感情で芝居をするなってことです」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)ほか。

※週刊ポスト2014年7月4日号

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