中国共産党や政府機関の幹部の腐敗摘発の総元締めである党中央規律検査委員会のトップ、王岐山・同委書記(党政治局常務委員)が5月20日から6月21日まで1か月以上、公式の場に姿を見せなかったことから、暗殺未遂による負傷説、あるいは健康不安説、または隠密裏に党・政府高官の腐敗摘発の準備を進めていたなどの諸説が入り乱れている。
王氏は5月19日、規律検査委の内部の会議で講話を行なったあと、山東省に出張して以来、動静報道が途絶えた。再び現れたのは6月22日の政府高官の告別式で、習近平国家主席ら政治局常務委員9人全員が姿を見せた。
この1か月以上、王氏がどこにいて、何をしていたかだが、まったく伝えられていない。
香港誌「動向」によると、王氏は昨年8月下旬、出張先の江西省南昌市で、2人組の暴漢に襲われ、危うく殺害されるところだった。王氏以外にも、同委幹部4人が命を狙われており、習氏は同委関係者の警備強化を指示したという。
このため、香港を中心に、今回も山東省で何ものかに襲われ、日常の仕事ができないほど負傷したとの憶測が流れた。また、病気になり、入院したとの情報も出ていた。
中国紙「河南商報」は元政治局常務委員で、すでに身柄を拘束されている周永康氏の取り調べが大詰めを迎えており、起訴や裁判の準備などの作業で忙殺されており、公式行事に出席する時間もないほどだなどとも報じている。
周氏の事件は公式に発表されていないが、この1か月間に、規律検査委は腐敗事件67件を手がけ、71人の身柄を拘束している。このなかには、これまで摘発されたなかでは最高幹部の蘇栄・中国人民政治協商会議(政協)副主席も含まれている。蘇氏は副首相級の幹部。
このほかにも、胡錦濤・前国家主席の腹心中の腹心だった令計画・政協副主席(元党中央弁公庁主任)の兄である令政策・山西省政協副主席や山西省副省長ら地方幹部も多数取り調べを受けており、王氏が多忙を極めていたことは想像に難くない。
とはいえ、最高指導部機関の政治局常務委員が丸1か月も公式行事に姿を見せないというのは異例。米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「多維新聞網」によると、いまだに暗殺未遂による負傷説のほか、ファミリービジネスで少なくとも27億ドルの巨額な蓄財をなした温家宝・前首相や家族らの摘発が進んでいるとの観測も出ている。