東京都議会で登壇した塩村文夏都議(35)に対し「早く結婚した方がいいんじゃないか」と野次を飛ばした鈴木章浩都議(51)が謝罪した騒動は、広く世界にも報道された。“悲劇のヒロイン”となった塩村氏だが、政治家としての姿勢が問われる側面もある。
野次の中に「産めないのか」という発言があったとして事実確認もせずにツイートしたが、この発言が本当にあったかは確認できていない。海外メディアの取材に対しては、「女性議員は働きにくいと言われても否定できない。男性がスタンダードと感じる」と、日本社会批判を展開した。意見を述べることは構わないが、それはきちんとした事実検証が前提である。しかも、その発言が海外で飛躍した「日本の女性蔑視論」につながった責任も問われよう。
また、名誉毀損や侮辱罪で告発し、司法に委ねることも最終手段として考えていると言い出すことにも政治家としての未熟を感じる。議会内で起きたことである以上、証拠と言論で戦うことこそ政治家としての姿勢だろう。たとえ不道徳な発言でも悪口雑言でも、一応は何も規制されないというのが言論の府のルールである(だから議員には高いモラルが求められるわけだが)。
塩村氏の過去の経歴やタレント時代の言動が取り沙汰されている。ある女性タレントは「女を武器にしてきた過去の発言をみても、彼女が女性の代表として主張しているのに違和感がある」と政治家としての資質に疑問を投げかけた。
過去の発言とは、7年前、明石家さんま司会のバラエティ番組『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系)に出演していたときのことで、「肩書きがある男としか付き合わない」「今まで付き合った人は慰謝料くれたから。1500万円」といった発言を繰り返し、交際相手に「妊娠した」とウソをついて反応を試したエピソードも披露していた。
その後、2013年に政界入りする前まで放送作家をしていたという塩村氏だが、同じ番組で働いていた放送作家によると、その経歴にも疑問符がつくという。
「彼女がしていた仕事は放送作家というより、情報を集めてくるリサーチャー。完全なウソではないが誇張がすぎるんです。ネタ会議でもそうでした。いつも独身女性の代弁者のように『女性目線』を強調していた。あの押しの強さとしゃべりのうまさは政治家向きかもしれませんが」
もちろん彼女が政治家になる前の経歴を面白おかしく取り上げることに意味があるわけではない。彼女が都民の審判を受けて都議バッジを付けているという意味は非常に重い。
だが、「恋から出演者」時代と同じ感覚のまま“目立つためなら話を広げてもいい”という手法を議会に持ち込むのであれば、場違い、勘違いというしかない。
その意味では、塩村氏の過去の経歴を暴いて、「だから塩村が悪い」と誘導する報道も問題の本質を捩じ曲げている。これもまた「悪ノリ」の一つである。
※週刊ポスト2014年7月11日号