消費税増税から3か月。ただでさえ食料品など生活必需品の物価上昇は家計にとって痛手なのに、さらに「値上げの夏」がジリジリと襲いかかってくる。
7月から順次、価格改定されるのは、ハムやソーセージ、バター、お菓子ほか。
日本ハムは主力商品計284品目を平均で約10%値上げすると発表。それに伴い、伊藤ハム、丸大食品、プリマハムといった同業他社も8月にかけて揃って値上げに“便乗”する。また、雪印メグミルクも7月1日出荷分から家庭向けバター4品目を2.1~2.3%値上げするという。
価格を据え置く商品も値上げに変わりはない。【ハムのスライスを薄くして2g減(日本ハム)】、【ミルクチョコレートの縦横1cmずつ小さくして5g減(明治)】、【ミニカップの容量を120ml→110ml(ハーゲンダッツジャパン)】など、セコく内容量を減らしていく方針だからだ。
各メーカーとも値上げ理由について、「一昨年から続く円安基調によって、原材料や資材調達の輸入コストが大幅に上がっているため」と説明している。「もはや自社努力だけで吸収するのは困難」(日ハムの竹添昇社長)と窮状を訴える声が出るほど、食品メーカーはコスト構造の転換を迫られているということか。
しかし、大手ハムメーカーの2014年3月期決算をみると、総じて営業利益は対前年比増を記録しており、プリマハムにいたっては過去最高益を叩き出している。それなのに、どうして各社横並びで値上げしなければならないのか。
第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏は、「消費者心理を考えれば、今しかないと決断したのでしょう」と指摘し、こう続ける。
「各社ともコスト増でこれまで通りに利ザヤを稼げなくなっているのは確か。でも、消費増税後の4、5、6月はいちばん需要が落ち込む時期なので、みすみす販売数量減に拍車をかける値上げには踏み切れなかった。
それが6月、7月になるとボーナスシーズンで反動減のリバウンドも見込めますし、増税前に食料品を買い溜めしていた人たちの“家庭内在庫”もそろそろ尽きてくる頃。ここは内容量が見劣りする形でもいいから、一気に値上げを推し進めて単品ごとの利益率を改善させようとしているのでしょう」(熊野氏)
確かに、総務省が発表した5月の「家計調査」によると、住宅や自動車、白物家電など支出が大きい商品は反動減が目立ったが、食料品や外食への支出は早くも回復していた。