「ふざけるんじゃない。一刀流でも大変なのに、プロ野球を舐めたらいかん。俺が現役捕手なら、絶対に打たせない」
「お見事。投げるボールに意志が伝わっている。打者としても10年に1人の逸材だ」
両方とも同一人物のコメントである。発言の主は球界のご意見番・野村克也氏。最近絶好調の日本ハム・大谷翔平に関する論評だ。
今年の大谷は、特に投手としての成績が際立っている。昨年は13試合に登板して3勝、防御率4.23だったが、交流戦終了時までに12試合に登板し、7勝1敗、防御率2.61の数字を残している(記録は交流戦終了までのもの)。
「評価すべきは、得点圏にランナーを置きながらも失点しないという得点圏防御率が12球団でトップだということ。かつての大投手・江川卓のように、ここ一番では打たせないという凄みが出てきました」(日本ハム番記者)
大谷には多くのメジャーのスカウトが視察に訪れ、毎試合、熱い視線を送っている。自己最速を更新する160kmをマークして5勝目を挙げた4日の広島戦では、前田健太(広島)を調査するため訪れていたレッドソックスのアラード・ベアードGM補佐ら複数のメジャー幹部が、前田よりも大谷に関心を示していた。
しかし某メジャー球団のスカウトは大谷についてこう危惧する。
「メジャーのスカウトが本国の球団に送るスカウティングレポートは『投手・大谷』のみだ。確かに打撃のセンスもあるが、このレベルの打者はメジャーにゴロゴロいる。むしろ我々が心配するのは、大谷が打ちたがることで余計な怪我や故障をしないかだ。早く投手に専念してほしい」
日本ハムは大谷獲得時に「将来のポスティング移籍容認」の条件を出しているとされるだけに、メジャーからの評価には敏感だ。
「そうなると、ポスティングで大谷を高く売るためには、投手に専念させたほうがいいという判断を下す可能性もある。もう二刀流による客寄せ効果も一段落してきたし……」(スポーツ紙記者)
夏の終わり頃には「打者・大谷」は見納めになるかも?
※週刊ポスト2014年7月11日号