Vシネマ誕生から今年で25年。Vシネマとともに役者人生を歩んできた哀川翔が、Vシネマの知られざる裏側を語る。プロインタビュアーの吉田豪氏が、哀川に斬りこんだ。
──Vシネマにしがらみはほぼないんですか?
哀川:ゼロですよ、ゼロ! 好きにやっていい、その代わり日程どおり上げてくれって。でも、東映は質にうるさかったの。社長試写があって、そこを通らないと商品にならないんだよ。NGが出ちゃうとお蔵入り。5000万~6000万かけてるのにお蔵だもん。だから俺はいつも社長試写に行ってたよ。OKを出させるために「よろしくお願いします!」って(笑)。
──そういう空気を作ってたんですか!
哀川:そうそう、空気を作って。シーンとさせないように。だから売れたの。だって3万本とか売ってるんだもん。俺は1作で最高4万2000本、年間10万本売ったんだもん。で、2年連続でVシネマ大賞をもらって、ロレックスかなんかもらって、「こんなのもらっちゃった」って言ったら、俺の先輩が「そんなので騙されるなよ」って(笑)。
──相当貢献してるわけですね。
哀川:年間、主演で10本、助演で12本入ってたときがあるからね。最近はVシネじゃなくてTVドラマだけど『牙狼』でアクションもバリバリやったよ。初日に大黒ふ頭のところで撮影したんだけど、大黒ふ頭はトラックとかしか入れないじゃない。
それが撮影用にゲートを開けてくれるから、2日目は出番なかったんだけど、監督に「釣りを後ろでやってていいですか?」って言って、休みなんだけど、スーツアクターの人たちがアクションしてる後ろで玉置浩二さんと釣りをしてるんですよ(笑)。
──えーっ、そうなんですか!
哀川:「玉ちゃん、明日大黒ふ頭が開いてるから行こうよ!」「魚が跳ねてたからよく釣れるよ」って(笑)。もうこんなチャンスはないから。「ちょっと映ってるんですけど、CGで消しておきますから」ってスタッフに言われてね。
──消さないほうが面白いのに(笑)。
哀川:しかもライトバッチリだったから。すごいのよ、魚が寄ってきて。半端じゃない。「ヤベえよこれ!」みたいな。もう釣りまくりだもん。ポーンと入れたら、ポーンと釣るから、玉置さんが、「うまいね。俺の歌ぐらい釣りうまいね」って(笑)。
◆哀川翔(あいかわ・しょう)/1961年、徳島県生まれ。俳優。1984年から一世風靡セピアのメンバーとして活躍し、『前略、道の上より』でレコードデビュー。その後、テレビドラマや映画を舞台に俳優として活躍し、1990年代には『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ~』シリーズを皮切りに多数のVシネマに出演した。2005年に日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞し、映画やバラエティ番組など多方面で活躍。現在、来春公開予定の芸能生活30周年記念映画(品川祐監督)を撮影中。
※週刊ポスト2014年7月11日号