ビジネス

サントリー創業家トップが新浪新社長に託した「本当の課題」

 5000億円から、一気に2兆円へ──。連結売上高で4倍もの企業のトップへと転身を遂げたのは、サントリーホールディングスの新社長に就任することになったローソンの新浪剛史・会長。同族経営で知られるサントリーで初の外部からのトップ起用として注目が集まったのは周知の通りだ。

 新浪氏を口説いたサントリーの佐治信忠・会長兼社長は「彼の持つ国際性に期待したい」と語り、新聞も「ダボス会議の常連で国際派」と強調する記事が目立った。が、佐治氏の狙いは別のところにあると指摘するのは、2人と同じ慶応大学出身で両氏をよく知るある大企業幹部だ。

「新浪さんはどちらかというと『平時のリーダー』。ローソンの海外進出を加速させたといっても10年あまりで4か国・約480店舗。ライバルのセブン-イレブン(約3万5000店)、ファミリーマート(約5000店)と比べれば海外での勝負を重視してきたわけではない。攻撃的ではないが、堅実に成長させていくタイプの経営者です」

 佐治氏自身も記者団から「新浪氏は世界戦略で成功した印象はないが?」と問われ、「可能性に懸けている」と答えている。

 1兆6000億円もの資金を投じて米蒸留酒大手・ビーム社を買収したばかりのサントリーは「国際化」がキーワードのように語られるが、逆にいえば大規模な海外企業M&Aは当面ないとの見方も多い。

 長年サントリーを取材してきたジャーナリストの永井隆氏は「仮にM&Aがあるとしても、それは引き続き(会長に留まる)佐治氏が判断する」と見る。永井氏は新浪氏起用の「もう一つの狙い」についてこう語る。

「佐治氏は私の取材に常々、『社員が少しずつ官僚的になってきた』『やんちゃボーイ、やんちゃガールが減っちゃったんだ』と語っている。サントリーを再びチャレンジ精神溢れる会社にできる人物を後任にするのは、佐治氏の悲願だった」

 創業者・鳥井信治郎氏の口癖で、自由な社風を象徴する「やってみなはれ」。これまで新浪氏も「好きな言葉だ」と語ってきた。

 強いリーダーシップを持つ68歳の創業家トップのもとで社員がサラリーマン化したとすれば、外部招聘で55歳と若い新浪氏なら現場からモノがいいやすくなる。

 サントリーはさらに進化を遂げるのか。さぁ新社長、やってみなはれ。

※週刊ポスト2014年7月11日号

関連キーワード

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン