首位を巨人に明け渡してのリーグ戦再開となった広島だが、カープファンは23年ぶりのリーグ優勝を信じて疑わない。今年の広島はとにかく打てるからだ。交流戦終了時点で、本塁打数は両リーグ断トツの76本(記録はいずれも交流戦終了までのもの)。バレンティン擁するヤクルトの68本、本拠地が狭い巨人の62本を上回り、最も少ない中日の37本の倍以上を放っている。
来日3年目のエルドレッドが打ちまくり、すでに23本と量産態勢。ロサリオとキラの両助っ人もそれぞれ7本、日本人選手でも丸佳浩8本、菊池涼介5本と若手も長打力を発揮している。長年、貧打に喘いできたことがウソのようだ。
その秘密の鍵を握るのが、野村謙二郎監督だ。不調に陥った選手を野村監督が指導すれば復活すると注目されており、球界の一部では「ノムケンの魔法の言葉」と呼ばれている。 きっかけとなったのは昨年9月、不調のキラに特打を指導したこと。「もっとミートポイントを前にするように」と助言されたキラは、翌日からのヤクルト3連戦で試合を決める特大ホームランを連発した。
今年5月中旬には、13打席無安打と調子を落としたエルドレッドにも直接指導。すると直後の巨人戦で満塁弾を含む2本塁打6打点と大暴れした。エルドレッドはすっかりノムケン信奉者となり、いまや監督を「ケニー」と呼ぶほど。
「ボール球に手を出さなくなった。ケニーのおかげさ。反復練習でいつも思い出させてくれるんだ」
ノムケン指導が、外国人中心に効果が出るのには理由がある。監督のコミュニケーション能力だ。2006年から2年間渡米し、カンザスシティ・ロイヤルズで臨時コーチを経験した際、独学で英語を学んだ。そのため選手との会話は英語でこなす。選手の性格を掴んだうえで、個性に合わせた指導をするから理解しやすいという。現役時代には三拍子揃った選手として鳴らし、打撃理論には定評があった野村監督だけに、効果は抜群のようだ。
このままいけばチームの年間最多本塁打記録(205本)を更新するペース。広島は後半戦も「ノムケン指導」で打ちまくると見て間違いないだろう。
※週刊ポスト2014年7月11日号