厚生労働省は国民年金の「納付率を高める」という目標を達成するために、何と「免除者数を増やせ」というとんでもない指示を出していた。6月23日、厚生労働省は2013年度の国民年金保険料納付率が「60.9%」となったことを発表した。
週刊ポスト7月4日号の記事では、その厚労省発表の納付率が大ウソであることを指摘した。一般には公開されていない同省の資料には、2012年度の表向きの納付率は59.0%ということになっているが、「本当の納付率」は39.9%と4割以下に落ち込んでいることが記されていた。
そのカラクリは、保険料納付の免除者(384万人)や学生などの猶予者(222万人)を増やして、分母(納付すべき人)から除外することで見かけの納付率を上げるというもので、保険料の収納事業を委託した民間業者に対し免除の目標値を指示していたのである。
構造的・組織的に「免除」が優先されていることを示す動かぬ証拠がある。業者の活動の「結果」が雄弁に物語る。
委託された業者が未納者にアプローチした結果、目標をどれくらい達成できたかを示した数字がある。厚労省が6月23日に2013年度の納付率を発表した際に、参考資料として公表した数字だ。
2012年10月に民間業者が事業を開始した116年金事務所のうち、現年度の年金保険料を納付させる目標が達成できたのは、なんと「0事務所」。一方、「免除等」の目標を達成できたのは114事務所にのぼった(2013年2月開始分では196事務所中、目標達成14に対し未達成182、「免除等」は達成183、未達成13)。
月数・件数ベースでの達成率を見ても、同時期に事業を開始した116年金事務所での保険料納付月数は80.6%と目標を大幅に下回ったのに対し、免除件数は114%と目標をしっかり達成している。
厚労省は本誌取材に、「免除を増やすという政策は取っていません。免除申請できるのに制度を知らない方には、その点をお伝えしています。が、基本的には未納の方に納付していただくという活動です」(年金局事業管理課)というが、それならばなぜ「免除」に目標値を設定し、そちらばかりが目標を達成しているのか。元年金事務所幹部はこう証言する。
「上からは、とにかく納付率を上げろとハッパをかけられている。よほどのバカでなければ、そのためには支払いを求めるより免除者を増やすほうが早いとわかります。
訪問前に一応、支払ってほしいという督促状は送っているが、現場では『免除というお得な制度がありますよ』と勧めているのが現実です」