厚生労働省は6月、飲食店での豚レバ刺し提供を禁止する方針を決めた(実施時期は未定)。2012年7月の牛レバ刺し禁止に続く第2のレバ刺し規制となる。
レバー規制について厚労省に訊ねると、決まり文句のように「安全性を保つため」「消費者の健康のため」と答える。だとするなら、飲食店への罰則規制が、どれほどの効果をあげているのか。
たとえば精肉店で加熱用として売っているレバーを自宅で刺身にして食べても罰則を受けることはない。安易な規制の結果、レバ刺しを求める人々は別の方法で生レバーを入手し、衛生管理の知識や技術もないまま生食して、かえって大きな危険にさらされることになる。
たとえば、インターネットで調べれば大手のショッピングサイトでは、こんな文言で“加熱用レバー”が売られている。
「黒毛和牛 即出荷 鮮度抜群!」
「法律改正前は生レバーとして販売しておりましたが……残念ながら今は同じ鮮度のものを加熱用として販売中です」
中には、「加熱してお召し上がりください」と書きつつ、その但し書きの真下には生ビールのジョッキとレバ刺しの写真が掲載されているものもあった。
これらのネット通販が、レバ刺し目当ての消費者をターゲットにしたものであることは明白だ。ある畜産関係者がいう。
「牛の内臓の賞味期限は4~5日、豚はもっても2日で、通販なんてとんでもないことです。こういう業者が信用できないのはいうまでもないが、それでも売られるのは、それだけ生で食べたいという需要があるからでしょう。厚労省の規制がこのようなグレーゾーン業者を生み、新たな危険を作ってしまった」
お上が規制で押さえつけようとすればするほど、このような事態は頻発する。全国食肉事業協同組合連合会の小林喜一・専務理事がいう。
「レバーの生食は個人の嗜好であり、食べたくない人は食べなければいい。規制をしなくても個人は自己責任で危険を回避できる。消費者にリスクの情報を伝達し、後は個人の責任に委ねることが原則であり正論でしょう。行政にとって、規制は責任逃れのアリバイ作りでしかないのです」