W杯もいよいよ佳境に入ってきた。強豪国揃いの決勝トーナメントからはまだまだ目が離せないが、なんだか気になってしまうのが出場国の国歌だ。
たとえば、開催国のブラジル。「1番だけでも2分間ある」と言うのは『フットボールde国歌大合唱!』(東邦出版刊)著者でサッカーライターのいとうやまね氏だ。
「ブラジル国歌は長いうえに難しい曲なので、これまで選手もちゃんと歌っていませんでした。W杯招致が決まってからは国際試合のたびにテレビで歌詞を字幕表示するなど国をあげてのキャンペーン活動を行いました。今大会では選手もスタンドのサポーターも熱唱しています」
長すぎることの弊害は他にもあった。『国のうた』(文藝春秋刊)著者の弓狩匡純氏が言う。
「FIFA(国際サッカー連盟)の規定で試合前の国歌斉唱は90秒と決まっているため、前奏だけでも16小節もあるブラジル国歌の演奏はコンパクトにまとめられています。しかし昨年のコンフェデ杯からは伴奏が終わったあとも、観客と選手が一体となって1番をアカペラで歌いきっています。今大会メキシコ戦前の国歌斉唱ではエースのネイマールが顔を押さえて泣いていました。選手とサポーターが一丸となったことに感極まったからではないかといわれています」
曲の長さで負けていないのがアルゼンチン、ウルグアイ、チリの3国。いずれも決勝トーナメントまで進んだ強者たちだが、勝負はサッカーだけではない。前出のいとうやまね氏が言う。
「アルゼンチンは90秒間ある前奏のみが流されます。チリもウルグアイも長い国歌で、最後まで歌うことはありません。南米の国はほぼ同時期に独立し国歌が作られたため曲の傾向が似ています。壮大なオペラのようです」
6月29日(日本時間)のブラジル対チリ戦では、サポーターの間でどちらが時間をオーバーして歌い続けるのかと話題になっていたという。
「チリは大会前に『観客が歌い続けるので伴奏を長めに流してほしい』との要望を運営側に出していたそうです」(いとうやまね氏)
試合はブラジルが勝ったものの、歌はどちらも負けないアカペラ大熱唱で引き分けでした!
※女性セブン2014年7月17日号