誰もが名を知るような大企業の本社ビルには、必ずと言って良いほど、美しい女性が受付に座っている。しかし社員の待遇がいいはずの大企業でも、こと受付嬢となると、セクハラを含めてかなり厳しい労働環境に置かれている現実がある。「ブラック企業」ならぬ「ブラック部署」も少なくない。ブラック企業問題に詳しいジャーナリスト・秋山謙一郎氏が話す。
「受付嬢の仕事はルックスの良い、若い女性ばかりが採用される傾向にあり、女子アナの世界でいわれる“30歳定年説”まである。そのため非常に離職率が高く、不安定な職種といえます。極端な言い方をすれば、企業にとって受付嬢は使い捨てでいいというぐらいに立場が弱い。彼女たちの仕事環境に難があっても、会社側は率先して改善しようとは思っていない」
大手アミューズメント企業の受付嬢をする西田愛子さん(28・仮名)がいう。
「ウチの会社は社長の方針で、受付にはモデルと見紛うほどのスタイルの良い美人ばかりが並んでいます。そのぶんプレッシャーがすごい。2週間に1度、美容院とエステに通うのは仕事の一環とされています。メイクの崩れはご法度で、ネイルが少し剥げただけでも女性上司から厳しく叱責されます。
ボーナスが出たら韓国に行って、顔にヒアルロン酸を注入したり、目元を大きく見せる切開手術をしたりなんていう同僚も多い。自腹でかかる美容代がバカになりません」
役員や幹部社員が公私混同の接し方をするケースも多いようだ。大手広告代理店の受付嬢、松沢真由さん(30・仮名)の話だ。
「役員や幹部の愛人と噂される子が派遣されてくることはよくあります。“専務が銀座のクラブから水揚げしてきた子だよ”などという陰口は日常茶飯事。しかも本当に一度でも男女の関係を持ってしまうと、会社にいる限りはなかなか抜けられない。私はかつて不倫していた部長が異動してきて直属の上司になり、再び関係を強いられたことがありました。
私たちの立場は圧倒的に弱い。以前、ある男性社員が受付嬢の同僚に応接室を予約させて、そこで関係を迫ったことがあったんです。それがバレて問題になった時、会社はどう対応したと思いますか? 彼女だけがクビになって、男性社員はお咎めなしですよ。これが受付嬢の立場なんです」
※週刊ポスト2014年7月11日号