ライフ

日本のポップコーン人気も28年周期か ポルトガル船にルーツ

グルメポップコーン戦争勃発

 東京・原宿を中心にグルメポップコーンブームである。いかにもアメリカンなこの食べ物、しかしその「原型」は日本国内で16世紀から食べられていたという。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 ポップコーンの人気がハネている。原宿では複数の専門店に行列ができ、「原宿ポップコーン戦争」と呼ばれるほどの活況だ。2013年に「ギャレットポップコーン」「ククルザポップコーン」が相次いでオープン。今年、健康志向の強い「ドックポップコーン」も原宿に進出した。中目黒の「HillValley(ヒルバレー)」も合わせてにわかに東京はグルメポップコーン都市の様相を呈している。

 現在の国内におけるポップコーンのスタイルは、終戦後にアメリカから持ち込まれたものがベースとなっている。しかし日本におけるポップコーンは、呼称は違えども実は、はるか以前から親しまれていた。

 その中核となったエリアが四国だ。日本にとうもろこしが上陸したのは1579年のこと。ポルトガル船によって、長崎もしくは四国にフリントコーン(硬粒種)が持ち込まれ、四国では早い時期からとうもろこしを加熱して爆発させたものを食べていた。ちなみにフリントコーンとは、現在のポップ種(爆裂種)のもとになった品種である。

 大正時代~昭和初期の食生活の記録を都道府県ごとに残した農文協の「聞き書」シリーズをひもといてみると、当時から四国では「焼いてはじかせた、真っ白い花のように開いたきれいで香ばしい」とうもろこしをおやつなどにしていたという記述がある。徳島で「はぜとうきび」、愛媛、高知では「花きび」。さらに紀伊水道の四国対岸に当たる和歌山でも「花」と呼ばれて親しまれていたという。

 他の地域でも江戸期から明治にかけて四国で育まれた和製ポップコーンが和歌山へと伝わったと考えるのが自然な道筋だ。

 その他のエリアでは明治期に開拓が進んだ北海道でも、大正から昭和初期には「はぜきび」「はぜきみ」という名で、はぜたとうもろこしを「砂糖あめ」や黒砂糖、水飴などでからめていたという。現在のグルメポップコーンにおけるキャラメル味に似た位置づけといったところか。

 ブームやトレンドは「28年周期で訪れる」という説がある。いまから28年前と言えば1986年、東京・吉祥寺に日本初と言われる路面ポップコーン販売店「ザ・パップコーン・ピープル」がオープンした年だ。さらにもう1回転さかのぼると、1957年には日本初のブランドポップコーンで現在もNo.1ポップコーンブランドとして知られる「マイク・ポップコーン」が発売されている。

 ポップコーンという食べ物は、安居酒屋のお通しで供されるなど、なじみがあるのに軽く扱われてきた感もある。確かに食感は軽い。だが日本における歴史は決して軽くない。この数年、映画館のグルメポップコーンの進化を土台に、その人気は底上げされてきた。2014年のポップコーンブームは、もう一段の爆発力をもってその先へと届くのだろうか。

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン