安倍晋三内閣の全閣僚の在任期間はすでに過去最長の500日を超え、近々の内閣改造と党役員人事が確実視されている。安倍首相にとって今回の改造には長期政権への道がかかっている。
そこで鍵になるのが菅義偉(すが・よしひで)官房長官の処遇だ。新聞辞令では「官房長官留任が有力」と繰り返し報じられているが、改造前の観測記事はカムフラージュのための情報操作であることが多い。安倍ブレーンの元官僚が語る。
「総理は来年9月の総裁選のライバルである石破茂・幹事長に安全保障担当相のポストを用意し、自衛隊法改正など集団的自衛権の法整備を担当させることを考えている。閣内に封じ込めれば総裁選出馬は難しくなる。そうなると、後任の幹事長として党をまとめるのは菅氏しかいない」
首相の“お友達”であるタカ派議員たちも、別の思惑から「菅幹事長」を進言しているという。
「菅さんの思想は中道寄りで総理や我々とは違う。総理の靖国神社参拝にも慎重だったし、河野談話の見直し断念を決めるなど、政権のタカ派色を薄めて安全運転に徹してきた。その菅さんが官邸から離れればもっと安倍カラーを鮮明に出せる。功績ある官房長官を更迭はできないが、幹事長ポストなら据わりがいいし、玉突き人事で石破さんを閣内に取り込めば一石二鳥になる。総理もよくわかっているはずだ」(安倍側近議員)
ただし、失言大臣や軽量大臣ばかりの中で「菅氏が官房長官であったからこそ政権に大きなダメージが及ぶことはなかった」(官邸筋)という評は少なくない。菅氏が去れば新内閣は今より不安定になるリスクは高い。実は菅氏の幹事長起用説には「年内解散」という安倍首相のもうひとつの大きな狙いが秘められている。だからリスクを取っても菅氏を異動させたいのだ。自民党役員の1人が語る。
「長期政権へのハードルは自民党総裁選と解散・総選挙のタイミングだ。来春の統一地方選だけなら石破幹事長体制のままでもいいが、総選挙となると総理のライバルの石破さんには任せられない。勝っても幹事長の手柄にされて石破支持派が勢いを増してくる。
その点、菅さんなら選対総局長を経験して選挙実務を熟知している。総理が直近の内閣改造で菅幹事長の起用を考えているのは、本気で年内解散を視野に入れているからに他ならない」
※週刊ポスト2014年7月18日号