「現代のベートーベン」のゴースト作曲家騒動や復興予算流用問題など、雑誌スクープが世間の耳目を集める例は多い。
ところが、後を追う新聞記事では媒体名を隠して「~~とわかった」「一部で報じられていた」などと曖昧にする“慣例”がある。そうしたパクリ記事は枚挙に暇がない。
<「全ろうの作曲家」として知られる佐村河内守さん(50)の代表曲……などを別人が作曲していた問題で、音楽家の新垣隆さんが5日、佐村河内さんに代わって曲を書いていたことが分かった。報道関係者へのファクスで明らかにした>
今年2月6日、毎日新聞は朝刊1面で「『代表曲など18年間』佐村河内守さん代作者、きょう会見」の見出しでそう報じた。
よく知られている通り、佐村河内氏のゴースト騒動の発端となったのは、当日発売の『週刊文春』が新垣氏の告白をスクープしたもの。
5日に新垣氏側が編集部を通じてファクスを報道各社に送り、翌日の記者会見を告知したことは事実だが、毎日は詳細を報じる社会面でも『週刊文春』記事について一切触れていない。
(同日付の全国紙では日経も同様。朝日は社会面で<新垣さんは6日発売の週刊文春に真相を告白>、産経は1面で<6日発売の「週刊文春」で報道されている>と書いた)
前日には週刊文春の記事が出回っており、5日付夕刊には第一報が出ていたが、それらの新聞記事にも出典は書かれていなかった。
佐村河内氏の件は雑誌発売前に当事者が会見を告知したことで各社の対応が分かれたが、新聞が「雑誌スクープが元ネタ」であることを書くケースは少ない。
5月には、人気歌手のASKAが覚醒剤所持の容疑で逮捕されたことを17日付夕刊で各紙が一斉に報じた。
昨年夏に『週刊文春』(8月8日号)が「シャブ&飛鳥の衝撃 飛鳥涼は『覚せい剤吸引ビデオ』で暴力団に脅されていた!」と題してスクープしていたことは記憶に新しい。が、逮捕を報じる新聞の第一報では「週刊誌で報じられた」など出典を曖昧にしたまま記事の内容を勝手に引き写し、その後の経緯を伝えていた。
※SAPIO2014年7月号