相変わらずウナギが高い。2010年4月に888円だった蒲焼き(100グラム)は、今年4月現在で1283円にまで上昇した(総務省家計調査)。
そこで始まっているのが代替品探しだ。アフリカ産、アメリカ産など外来ウナギは「脂が少なく風味不足」(同前)だという。そんな中、代替魚候補としてにわかに注目されているのがナマズだ。
蒲焼きにして見た目はほぼ変わらず、味は脂を抑えたウナギのサッパリ風味といった感じ。江戸時代からナマズ料理が盛んだという埼玉県吉川市では、ウナギ高騰の今こそナマズだと昨年からアピールに乗り出している。吉川市で7代続く老舗料亭『福寿家』の主人・小林政夫氏はこう語る。
「このあたりでは蒲焼きといえばウナギと並んでナマズの名が挙がります。川が3本合流する低湿地帯で、昔からナマズがたくさん獲れていました。値段の安さもさながら、上品な味わいで当店では人気の一品です」
同店ではナマズの蒲焼きが1600円から、ウナギは2400円から。確かに格段に安い。本誌記者は『福寿家』にご飯の上に蒲焼きを乗せた「ナマズ重」を、今回の取材のためだけに特別に作ってもらい、試食してみた。
見た目はウナギと変わらない。焦げた蒲焼きの香ばしい匂いが食欲をそそる。
肝心なのは味だ。ウナギより身がしっかりしており、歯応えは白身魚を食べている印象に近い。確かにウナギというには淡白すぎる気はするが、これはこれでおいしい。
気になったのは、白米との相性。ウナギのようにホロホロと身が崩れないうえ、脂分が少ないため、ご飯と絡まない。蒲焼きの味は合格点ながら、ウナ重ならぬナマ重となると、やや不満も残る。
やはり土用丑(今年は7月29日)くらいはウナ重とシャレ込みたい。
※週刊ポスト2014年7月18日号