7月1日、中国・北京で行なわれた日朝協議を受けて、安倍晋三首相は北朝鮮に対する日本独自の制裁措置の一部を解除する方針を発表した。拉致被害者など日本人行方不明者を調べる「特別調査委員会」の構成や権限について北朝鮮側から「誠意」ある説明があったというのだ。
今回の一連の日朝交渉はすべて北朝鮮のペースで進み、安倍官邸と外務省はそれに追従しているだけという情けない状況を物語る証拠がある。
6月上旬から中旬、金正恩直轄の秘密警察である国家安全保衛部が地方組織に大号令をかけ、国内にいる日本人の所在把握を進める調査が全土で行なわれたという情報がある。問題なのは調査の対象者だ。日朝外交筋はこう語る。
「調べているのは、まずは終戦前後の混乱で日本に帰国できなかった在留日本人とその家族。それに1959年に始まった在日朝鮮人の帰還事業で北朝鮮へ渡った日本人配偶者やその子供など約6800人。所在が確認できた日本人に対しては帰国の意思を問うている」
この証言が事実ならば、調査対象から拉致被害者や拉致が疑われる特定失踪者がすっぽり抜け落ちていることになる。それなのに安倍官邸は「誠意」を評価し、制裁を一部解除したのだ。
※週刊ポスト2014年7月18日号