『週刊ポスト』が鹿児島市内で発売当日に消えた。
「コンビニを数軒回ったのに売り切れだといわれ、駅の大きな書店で残り数冊のところをようやく手に入れましたよ」(地元住民)
6月30日に発売された同誌前号では春夏の甲子園を主催する高野連(日本高等学校野球連盟)の理事であり、九州地区・鹿児島県高野連の理事長を務める佃省三氏の公私混同問題を報じた。〈高野連理事「不倫メール350通と愛人宅での寝そべりショーツ写真」を公開する〉と題した記事は、首都圏に比べて店頭に並ぶのが2日遅れる鹿児島でも高校野球関係者の間で早くからコピーが回覧され、大きな反響を呼んだ。
記事は佃氏が「職務時間中のはずの平日の昼間から愛人の家に通い、高野連主催の大会中にもその相手と旅行に出かけていた」として県教育委員会に告発された事実を、不倫相手が提出した大量のメール、写真とともにスクープしたもの。
首都圏での同誌発売日に、佃氏は鹿児島県高野連理事長を辞任。ところが、全国組織である高野連では本稿執筆時点で理事の職に就いたまま。高野連事務局は、「本人から辞表は提出されたが、受理するかは理事会で決める。まずは『週刊ポスト』の記事内容の事実関係について調査するよう鹿児島県高野連に求めている」とまるで他人事の対応なのだ。
高野連は全国の加盟校が支払う加盟料と春夏の甲子園大会の入場料などが主たる収入源で、公益法人であるため大会運営で利益が出ても課税されない。そうした収入から、理事には出張の際の交通費や宿泊費などが支払われる。本誌は佃氏の「公務」の日程中の私的旅行について報じたのであり、高野連本体が調査を地方組織に押し付けていいとは考えられない。
また、高野連とともに夏の甲子園大会を主催する朝日新聞も素知らぬ顔だ。
佃氏の県高野連辞任を地元紙・南日本新聞は社会面の4段見出しで扱い、理由を〈週刊誌で、女性との不適切な関係が報じられた〉とした。誌名を書かない新聞社の“お作法”はさておき、対する朝日の地元版の報道はたった14行。夏の甲子園大会に事業費を拠出する立場としてむしろ厳しく追及しそうなものだが、〈辞任の申し出を了承した〉と書いただけで理由にも触れず。そうした姿勢の理由を朝日新聞に問うたが、回答はなかった。
高野連も朝日新聞も高校球児に「正々堂々」を説く立場だが、自らに都合の悪いことに見て見ぬふりをするようでは、何の説得力もない。
※週刊ポスト2014年7月18日号