古舘伊知郎氏の顔が、毎夜テレビ画面を飾るようになって早10年。ニュースキャスターらしくあろうと精一杯、知性を演出しているようなのだが、その言葉はあまりに空疎。聞いている方が悲しくなってくる。キャスターとしての古舘氏のちぐはぐな言動をメディア論が専門の関東学院大学教授・新井克弥氏が分析する。
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はじめに断わっておくが、私は古舘伊知郎その人が嫌いなわけではない。プロレスやF1の実況では大いに楽しませてもらった1人だ。しかし、その「パフォーマンス」をキャスターとしてやり続ける古舘には「場違いな印象」を拭うことができない。
その一つが、無知をさらけ出して恥じない点だ。
「いやー、専門的なところになると、私さっぱりわからなかったんですけど。だけどやっぱり、ちょっと珍しいことが起きているわけですね」
これはアメリカで発生した巨大な双子の竜巻のメカニズムを気象予報士が分析したVTR明けの発言だ(6月17日)。
専門家の説明が難しいのであれば補足すべきだが、古舘は「さっぱりわからない」と開き直って説明を放棄する。これでは情報をゴミ箱に捨てるようなものだ。
STAP騒動を伝えた時は「みなさん、パワポ(パワーポイント)ってわかりますか。私は知りませんでした」と発言して、「それでもマスコミ人か」と大きな反響を呼んだが古舘は鉄面皮だった。
※SAPIO2014年8月号