集団的自衛権の行使容認が閣議決定された。政策的な評価とは別に、自民党と連立与党を組む公明党が「平和の党」としての歴史を方向転換した意味は大きい。自民党の「下駄の雪」となって15年経つとはいえ、権力の旨みだけで党の根幹を変えてしまったのか。公明党OB議員がこんな見方をする。
「創価学会の池田大作・名誉会長の意向が届きにくくなっているのではないか。名誉会長は代表的著作『人間革命』の冒頭に、『戦争ほど、残酷なものはない』と書いているように、戦争反対は絶対的な信条だ。だからこそ創価学会は与党協議に先立って行使反対の見解を出したわけだが、それとは裏腹に、当の名誉会長が一向に表立って反対論を打たない。
公明党にすれば、『行使したいなら憲法改正せよ』とまで踏み込んだ学会が、その後はウンともスンともいわなくなって戸惑ったはずだ。山口那津男代表は相当悩んだんじゃないかな」
公明党が創価学会の意向に反して自民党にしがみついたのではなく、体調問題が取り沙汰される池田名誉会長の“不在”が判断を迷わせたとする解説である。いずれにせよ、公明党の本当の地獄はこれからだ。
「地方議員は真っ青だ。選挙を取り仕切るのは反戦思想の特に強い学会婦人部ですから、どうやって説得するか。今回のことで自民党への不満も増していますから、自公の選挙協力も容易ではない」(学会関係者)
巨大与党といっても、選挙協力が崩れれば惨敗も十分ある。安倍首相が次々と換骨奪胎してまでこだわった与党合意が、与党分裂の火種となった。
※週刊ポスト2014年7月18日号