5月16日、米食品医薬品局(FDA)が、中国産原材料を使用したドッグフードが原因と見られる犬の健康被害事例を発表した。発表によれば、2007年から現在までで、健康被害が確認されたケースは約5600匹。そのうち1000匹以上が死亡したと見られている。原因は不明だが、犬たちには胃腸疾患や腎不全による下痢や嘔吐の症状が確認された。
米国で膨れあがる中国産への批判に対して、中国側は猛反発している。
「米国の一部のペットが中国からの輸入ペットフードで病気になり死亡したというが、我が国としては科学的根拠に乏しいと考えている」(中国国家品質監督検査検疫総局スポークスマン)
しかし、この主張は、度重なる“前科”の前には虚しく響くだけだ。
2007年にも、アメリカで販売された中国製ペットフードから有害物質のメラミンが検出され、大規模なリコールが発生した。死亡した犬や猫は100匹以上といわれている。
メラミンは2008年に中国で乳幼児を中心に5万人以上の健康被害を出した「粉ミルク汚染騒動」でも問題となった物質。タンパク質の基準値検査で検出値を上乗せするために、中国の業者が故意に混入したものだった。
2007年から2008年にかけて中国で製造された冷凍餃子を食べた日本人が相次いで健康被害を訴えた「毒入り餃子事件」しかり。過去にここまで悪質な事件を起こしても全く反省の色を見せないのが彼の国の恐ろしいところ。
日本国内に同様の中国産ペットフードが流通している可能性は否定できない。
前述した2007年のメラミン騒動の際には、米国でリコール対象となったものと同じ商品が東北のホームセンターなどで販売されていた。被害例こそなかったが、米国同様の惨事が起きる可能性は大いにあった。
この騒動を受け、日本では2009年に「ペットフード安全法」が成立。原材料や原産国名の表示が義務づけられたが、専門家にいわせれば「ザル法」だという。
『新・ペットフードにご用心!』(宝島社刊)の著者であり、自らもペットフード販売会社を運営する押川亮一氏がいう。
「この法が定める原産国名とは、あくまで『最終加工』をした国を意味しています。つまり、中国産の原材料を使用していたとしても、パッケージングしたのが日本の工場であれば『日本製』と表示できるのです。
中国産の原材料を使えば、国産の10分の1のコストに抑えられる。そのため中国産の原材料を使用しているメーカーは少なくないのです」
現状の対策としては「メーカーに原材料の原産国を聞いてもらうほかない」(農林水産省消費・安全局)という。
危険な「毒フード」から愛犬を守るには、飼い主が注意深くチェックする以外に方法はない。
※週刊ポスト2014年7月18日号