音楽家の坂本龍一が7月10日、6月末に中咽頭がんが見つかっていたことを公表した。今後は治療に専念し、公の場に立つ音楽活動は休止するとのこと。7月30日に予定されていたパーク ハイアット東京の20周年記念ライブも中止となる。
今回のがん告白では、スポーツ紙の報道をめぐり、ちょっとした騒動があった。7月10日のスポーツニッポンで、坂本が反原発運動に先頭にたってきた立場から、放射線治療を拒否している、と報じられたのだ。
咽頭がんでは、抗癌剤と放射線治療を行われることが一般的で、早期発見の場合は完治する可能性も高いという。しかし、放射線治療を拒否するとなると、手術で咽頭を切除することとなり、声が出せなくなってしまう可能性もあるのだ。
そこで「反原発の立場から放射線治療は拒否」と報じられた坂本だが、原子力発電と放射線治療はまったく別のもの。ネット上では、
「原発の危険性とは別だろうから闘病に関しては最適な治療を受けて欲しいです」
などと、「放射線治療拒否報道」に対して違和感を抱いたという意見が多数寄せられていたが、7月10日の午前10時頃、坂本のマネージャーがツイッターに、「スポニチーーなんて適当な記事…」と、投稿すると、それを受けて坂本本人も、「読んでないけど。ああいう芸能記事を真に受ける人いるの?」と、つぶやいた。
ある芸能ライターはこう話す。
「具体的に記事のどの部分が“適当”であるかは不明ですが、おそらく『放射線治療拒否』という報道は、間違いだったということでしょう。そもそも、医療の現場にはレントゲンやCTスキャンなど、放射線を活用した技術がたくさん導入されていて、がんを発見するにはそれらを使っているわけで、『放射線治療拒否』というのは矛盾していますよね」
そして、今回の“誤報”は反原発派にとっても、歓迎されないものだったという。前出芸能ライターは続ける。
「何でもかんでも原発や放射能と結びつける反原発派は “放射脳”などといって揶揄されていますが、“反原発だから放射線治療を拒否”と報道されたことで、ネット上では坂本龍一も“放射脳”だと言われてしまいました。おそらく、今回の一件で“坂本龍一は原発や放射能のことをまったく分かっていないのでは?”と感じてしまった人は多かったと思います。
坂本龍一は、反原発派の代表的な有名人ですから、誤報であることを明確にしないと、“反原発派は何も分かっていないのにただ原発に反対しているだけ”というイメージが定着してしまう危険性もありますね」
坂本は具体的な治療方法などは明かしていないが、今後はアメリカで治療をするという。どのような治療法を選択したかに関わらず、とりあえず誤解をといておく必要があるのではないだろうか。