安全保障について力を入れると明言し、実行してきた安倍晋三政権だが、国際的な危機に対して目覚ましい対処をしたという印象がない。作家の落合信彦氏が、日本の安全保障上の実力について解説する。
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日本版NSC(国家安全保障会議)が発足してはや半年が経つ。だがこの間、安倍晋三の靖国参拝以降の日米関係悪化、ロシアによるクリミア侵攻、中国とベトナムの南シナ海衝突といった外交問題において、NSCが何ら存在感を示せなかったことは明白だ。日本版NSCの建物は、大地震が起きれば機能がガタガタになるほど脆いというが、それはまさに、この組織の脆弱さを象徴している。
私は発足前から、日本にNSCを作って役人たちが集まったところで、会議で話すことなど何もないし、機能するはずがないと指摘してきた。結果はご覧の通りだ。なぜ私はそう予言したか。日本には、情報を取ってくる諜報機関が存在しないという致命的欠陥があるからだ。
日本に情報を取る力がないことは、昨年アルジェリアで起きたテロ組織による人質拘束事件において、安倍がイギリスのキャメロン首相に電話で「情報をください」と懇願したことからも明らかだろう。安倍は特定秘密保護法制定のときにも、「我が国が秘密情報の管理ルールを確立していなければ、外国からの情報を得ることはできない」と言っていた。情報は外国からもらえるものだと思い込んでいるわけだ。
勘違いも甚だしい。私の知り合いのCIA関係者はこう言っていた。
「日米同盟などと言っても、日本に我々がつかんだ重要な情報など渡せない。日本に情報を流すと、政治家を通じてすぐ中国や北朝鮮に横流しされてしまうからだ」
実は同様の見解を、警視庁公安部の人間からも聞いたことがある。彼は「我々にも、北朝鮮に関しては在日ルートを通じて、ノドン(中距離弾道ミサイル)の実態など詳細な情報が入ってくる」と言うので、私はなぜその情報を政治家にあげないのか、と聞いた。すると彼は、「言ったらすぐに(北朝鮮に)筒抜けになる」と言うのだ。
「我々は国のためにやっていると考えたいのだが、現実は違う」と、彼は嘆いていた。私はそのとき、本当にかわいそうに思ったものだ。
日本の政治家たちは、時にはそれが海外の諜報機関からトレース(追跡)されている偽の情報であることにも気づかないで、せっせと中国や北朝鮮の手先となって日本の情報を流してきた。そんな国に情報を渡すほど、アメリカはお人好しではない。
※SAPIO2014年8月号