NHK連続テレビ小説で人気の『花子とアン』(脚本・中園ミホ)は、『赤毛のアン』の翻訳家、村岡花子の明治から昭和にかけた激動の半生を描いた、花子の孫の村岡恵理氏の著書『アンのゆりかご』(新潮文庫)が原案である。
7月5日には放送開始以来、最高視聴率となる25.9%を記録。週間視聴率は放送開始から14週連続で21%を超えている。
縁の地をめぐる“聖地巡り”も盛んで、例えば幼少期の花子が通う教会として登場する山梨県韮崎市の「蔵座敷」には、放送開始から6月までの時点で、すでに昨年の年間入場者数を上回る約2000人が訪れた。
作中で繰り返される、「しっかり」を意味する「こぴっと」や、驚いた時に発する「てっ!」という山梨の方言も、『あまちゃん』の「じぇじぇじぇ」と同じく流行語になりつつある。
吉高演じるはなが明るく健気に頑張る「ヒロイン一代記」という一見オーソドックスな朝ドラでありながら、なぜ、ここまで人気が出たのか。
毎朝欠かさず見ているという上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏はこう指摘する。
「当初は『赤毛のアン』の翻訳家・村岡花子って誰? という印象だった主人公を、演技に定評のある吉高さんがうまく味付けして、非常に魅力的に作り上げた。それによって、村岡花子という実在の女性への関心が掘り起こされました。
また本作は、はなだけでなく、歌人・柳原白蓮をモデルとした仲間由紀恵さん演じる葉山蓮子とのダブルヒロインとして描いた点も良い。白蓮の人生は波瀾万丈で、史実でも『白蓮事件』という大正期を代表する不倫スキャンダルを起こしました。
これまでの朝ドラの爽やかなヒロイン像を守りながら、不倫という通俗性も盛り込んでいる。朝ドラとしては結構な冒険もしているから面白いんです」
※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号