現在、理化学研究所ではSTAP細胞の検証実験準備が行なわれている。小保方晴子・研究ユニットリーダーも理研チームとは別棟の独立した場所で再現実験に参加することになり、当面、懲戒処分審査が中断されることになった。
実験期間は11月末までとなっている。本人は「200回成功した」と会見で発言しているが、「見込みなし」あるいは健康状態が不安定で本格的に取り組めないとなれば途中で打ち切りとされる可能性もある。
理研の調査委員会はすでに「研究不正」を認定する調査結果を出しており、STAP細胞が再現できなければ退職金なしの懲戒解雇も十分あり得る。
年収800万円とも1000万円とも報じられる職を失うだけではない。荘司雅彦・弁護士はこう語る。
「小保方さんに、理研から損害賠償請求訴訟が行なわれる可能性があります。理研の信用を失墜させ、その結果寄付金収入などが減ったとなれば、それを請求することはあり得る。あるいは成功していない実験を成功したとの報告をして予算を出させたとなれば、それも請求の理由になり得ます」
今回は不正を見抜けなかった理研のガバナンスにも問題があることから、損害賠償が実際に行なわれるかは微妙なところではあるが、原資は税金だけにうやむやにすることは許されない。問題はまだある。
早稲田大学大学院時代に受け取っていた、税金で支出された「研究奨励金」などの返還が求められる可能性があるのだ。2008年から3年間、小保方氏は日本学術振興会の特別研究員として、毎月20万円の研究奨励金が支給されていた。また、最大で年間150万円の研究費も大学に補助されていた。3年間で総額1000万円以上になる計算だ。
それを受け取って執筆した博士論文に、米国専門サイトなどからのコピー・アンド・ペーストなど数々の疑義が呈されている(早稲田大学広報室は「小保方氏の論文については調査委員会で調査中」と回答)。
日本学術振興会によれば、「研究奨励金は、不正行為などがあれば返還要求できる規定がある。研究費補助についても捏造や改ざん、盗用などの不正行為があれば返還させることができる」という。
そのような事態となれば、以前と変わらない個人タクシー出勤&ブランド品生活を諦めるどころか、自己破産ということにもなりかねない。
理研に1日でも長くいれば、少なくともその間は給料が出る。それが再現実験参加に意欲的だった理由ではない、と信じたい。
※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号