「負けられないプレッシャー」に苦しむ学校もあれば、「失う物がない強さ」を武器にする学校もある。33年連続で東大合格者数日本一を誇る開成高校の野球部は、ドラマ『弱くても勝てます』のモデルとして知られる。全体練習は週1日、練習施設も不十分。そんな野球部が東東京大会で2005年にベスト16、2007年と2012年に4回戦へ勝ち進んだ。今夏こそ初戦敗退となったが、それも「振れ幅の大きいチーム」ならでは。野球部を率いる青木秀憲監督が「弱小校の兵法」を語る。
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ここ数年は結果が出ていないので恥ずかしい限りですが、我々にも「強豪と互角に戦いたい」という気持ちがあります。でも、選手の運動能力や練習時間に大きな差がある以上、まともにぶつかったのでは絶対に勝てません。
そこで辿り着いたのが、「譲れない能力だけを伸ばして、あとは目を瞑ろう」という考え方です。たとえば「徹底的に打撃練習する」。弱いチームは「守って勝つ」という思考になりがちですが、試合で自分のところにどれだけの打球が飛んでくるかどうかは不確定要素ですし、難しい打球となればさらにそうでしょう。
つまり、難しい打球を処理する練習は非効率的なんです。それに守備率を100%に近い状態に上げるには、長い練習時間が必要です。我々にはそんな時間はありません。
しかし打席は確実に回ってくる。ならば守備練習の時間を打撃練習に充てたほうが効率的です。
また、練習時間が少ないのであれば、頭を使うしかありません。でも僕らの頭脳プレーとはバントとかエンドランとかではない。どの場面でどんな攻撃ができるかという想定ですね。だから、練習試合を重視しています。何が起きて、何が出来て、何が出来なかったかというのは、試合経験からしか学べません。その記憶こそ「頭脳プレー」に繋がるのです。
もう一つ大事なのは、「常にどんな相手にも勝てるチーム」を目指さないことです。丁半博打で、当たれば強豪にも勝つし、不発なら驚くほど弱い負け方をする。そんな「振れ幅の大きいチーム」を目指しています。私は死ぬ程負けず嫌い。これからも「大物食い」を目指しますよ。
※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号