厚生労働省がこのたび新しい施策を打ち出した。「11月30日を『年金の日』とする」──。“いい未来”の語呂合わせだというが、年金について調べれば調べるほど“いい未来”とはほど遠いことが分かってくる。
厚生年金と国民年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が、2013年度に約10兆円の運用益を出したことを発表した。国内外の株価上昇による黒字だが、国民は「儲かってよかった」と喜んではいられない。
安倍政権はサラリーマンの年金積立金126兆円を株式市場に突っ込み、株価を吊り上げて支持率を高めようとしている。年金資金によるPKO(プライス・キーピング・オペレーション=株価維持策)ならぬPLO(プライス・リフティング・オペレーション=株価引き上げ策)を露骨に進める戦略だ。
株式市場への年金資金追加投資は10兆円前後という史上空前の規模になると見られ、実際の購入はこの秋以降に行なわれる。今、それを見越した役人が自分たちの年金積立金を使って株を大量に先回り買いし、ボロ儲けしようとしている疑惑がある。
後からどんどん株価を吊り上げてくれる資金があるのだから、役人たちの年金運用は「儲かる可能性が極めて高い投資」となる。一方でサラリーマンの年金は株を高値づかみして、大損する懸念が出てくる。「国家ぐるみのインサイダー投資」とさえいえる取引は、どのように行なわれたのか──。
マーケットでは、今年5~6月に役人の年金による株の“仕込み”と見られる怪しげな動きがあった。日経平均株価の推移を振り返ると、5月には何度も1万4000円を割り込みそうになったものの、結局は反発して大台を維持する日が続いた。そして6月に入ると安値を切り上げる格好で1万5000円を大きく超えた。
長年、兜町で活躍する中堅証券のディーラーは、その〈1万4000円の壁〉は「異様なほど強固に見えた」と語る。