6月、福岡・筑後市のリサイクルショップ経営者、中尾伸也被告(47)と妻の知佐被告(45)が2004年に従業員の日高崇さん(当時22)を殺害した容疑で逮捕された事件は、さらに別人の人骨が次々見つかっていることで連続変死事件の様相を呈している。
事件現場となったリサイクルショップ「エース」の元従業員で、命からがら逃げ出したという都内在住の田宮実さん(仮名)は、店から徒歩5分ほどのアパートで他の従業員と集団生活を送っていた。
「ワンルームのアパートに3~4人が雑魚寝。従業員同士は喋ってはいけないというルールを徹底的に叩き込まれたから、同居人の素性はほとんど知らない。伸也からは『監視役がおるから逃げられんぞ』といわれていました。実際、チンピラ風の男に見張られていた」
田宮さんの仕事は店内の掃除と荷物の運搬だった。毎日の仕事の中で不思議に思っていたのが、店の前にあるプレハブ小屋だった。
「机と椅子があるだけの殺風景な部屋ですが、よくヤクザ関係者が打ち合わせに使っていた。なぜ彼らの素性がわかったかというと、組員の名刺が机に置かれていたり、伸也たちの会話のなかで何々組という言葉が聞かれたりしたからです」
事件に深く関わっていると捜査当局が睨む重要人物、元暴力団員のX氏はこのプレハブを我が物顔で使っていた。中尾夫妻もX氏の前では大人しく、「Xが店を訪れた後、伸也はイライラして従業員をよく殴っていた」という。伸也被告とX氏の関係について、捜査関係者がいう。
「Xは伸也の暴走族時代のひとつ下の後輩だったが、後に暴力団員になり、伸也をあごで使うような関係になったようだ」
田宮さんは3か月に1度ぐらいのペースで特別な“荷物”を運ばされていたという。
「いつものようにXが店の前のプレハブで打ち合わせを終えた後のことでした。伸也に指示され、店の一番奥の陳列棚の下にある引き出しの中から箱を取り出して車に積み込み、店から15分ほど離れたコンテナに荷物を運搬した。
木箱と段ボール箱の2種類があり、木箱の蓋がずれた時、拳銃のようなものが入っていたのを2度見たことがあります。封がされていない段ボール箱には木の鞘のドス(短刀)が入っていました」
田宮さんは、「本物の拳銃だったかどうかはわからない」というが、エアガンにしては重かった記憶があるという。
※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号