刑務所の常識も、日本と中国とでは大きく異なる。中国の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏が報告する。
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これまでスポットを浴びることのなかった中国の刑務所にもいよいよ検察のメスが入ったようだ。
検察院が明らかにしたところによると違法な減刑、仮釈放、一時的保護観察処分などの手続きが違法に行われていたケースが全国で188件見つかったという。報じたのは6月29日付の光明ネットである。
中国刑務所はかねてから腐敗の指摘された組織でもあった。無期懲役になったはずの服役囚がなぜか街に戻ってきたり、刑務所を自由に出入りする服役囚がいたり、日本の刑務所では考えられないような現実があふれていたのである。また、服役者の待遇も賄賂次第で大きく違っていたとされ、家族や親戚はせっせと刑務所にワイロを運ばなければならなかったという事情が蔓延していたのである。
その無法地帯の刑務所にもいよいよ、官僚に厳しい習近平体制の下で大ナタを振るわれる時を迎えたというのだ。
きっかけとなったのは国民から寄せられた多くの告発だった。検察当局は、こうした問題の蔓延を受けて全国の検察は、メディアに〝挙報〟(いわゆる密告)を呼びかける。これに対し大きな反響があり、〈湖北省の検察には初日に20件の問題が告発されてきた〉というのだ。
これを受けて検察が本格的な調査に乗り出したのが3月20日。それから5月末までの間に188件、247人の違法な減刑、仮釈放、一時保護観察処分が明らかになったのである。
問題が発覚した全188件のうち、およそ7割が国民からの〝挙報〟が切っ掛けになったというから凄まじい威力だ。
新たに処分された服役囚のなかには、中国共産党の元副庁級に当たる大幹部らが、計18人も含まれていたと光明ネットの記事は伝えている。
現在の中国には刑務所に服役する囚人のほか、看守所に預けられる者、さらには社区矯正場所という簡易な罰を受ける施設もある。
このほか1990年に生まれた〈罪犯保外就医執行法〉という法律が中国には存在しており、検察組織はこれを問題視している。というのも、服役囚でも疾病を抱えた場合には刑務所の外で治療を受けられると定めたもので、本来は29種類の病気に限られているのだが、現実にはここに刑務所側の裁量が働き、非常に広い範囲の病気に適用されているという問題があるのだ。
病気と判断されるか否かも金か権力次第というわけだ。