中国では配偶者や子供を海外に移住させて、不正に蓄財した資産を国外に移したり、不正発覚の際には自身も国外逃亡を図る「裸官」といわれる腐敗官僚の摘発が本格化している。広東省では中国で最も早く裸官摘発キャンペーンが展開され、省最高幹部の一人、方旋・同省党委副書記兼広州市副市長が身柄を拘束されたほか、33人もの同省幹部が摘発された。
これほど多くの省幹部が摘発されるのは異例で、今後は他の省市・自治区でも「裸官狩り」が本格化するとみられる。香港誌「争鳴」が報じた。
広東省では「裸官」として、身柄を拘束された33人の省級幹部のうち、15人が全職務停止処分を受け、党幹部の汚職摘発機関である規律検査委員会の審査待ちの状態であるほか、11人が処分確定で引責辞任を強いられている。今後、裁判で刑期が確定することになる。
このなかでも裸官の典型例が今年60歳の方旋・元副書記で、すでに引退年齢に達しているため、来年には名誉職的な省人民代表大会(省人代)主任か、省人民政治協商会議(省政協)主席に転出するはずだった。
ところが、昨年来の官僚の腐敗調査で方氏が裸官であることが明らかになった。すでに、14年前に妻や子供が海外に移住し、外国籍を取得しており、方氏が家族の銀行口座に多額の不正蓄財を移していたことも明らかになった。
中国の汚職摘発機関である党中央規律検査委員会トップの王岐山・同委書記が5月中旬、方氏の例を引いて、「裸官問題は官僚の腐敗・堕落の事例のなかでも最悪のケースだ。民衆に奉仕すべき党幹部が不正を働き、市民から金を巻き上げ、その金で家族に海外に居住させるのは民衆や党を無視する売国奴的な行いに他ならない」と憤ったという。
中国政府のシンクタンク中国社会科学院が2011年に行なった調査によると、1990年代中期以降、海外に逃亡した幹部は1万8000人で、海外に流出した金額は8000億元(約14兆4000億円)に上る。また、1995年から2005年の10年間で、幹部の配偶者や子供の計118万人の海外に移住していることが分かっている。
規律検査委では「裸官は中国の幹部の家族の動向が外国勢力によって握られてしまい、政策決定に影響を及ぼしかねない」と警告を発している。
必ずしも裸官問題ではないが、習主席や温家宝元首相ら有力政治家の家族が租税回避地として知られる英領バージン諸島の企業を通じて資産運用をしており、そのうち中国から持ち出された額は2000年以降だけでも、1兆ドル(約100兆円)から4兆ドル(400兆円)に達すると推測されている。