東日本大震災の被災地、宮城県石巻市は、コラムニスト木村和久さんが高校卒業までを過ごした故郷の地。木村さんは縁ある人々の安否を自身の足で訪ね続けていますが、今回は東京都内で展開された「復興バー」についてです。
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石巻に「復興バー」という、若者が集うバーがあり、連日賑わっています。運営しているのは「一般社団法人ISHINOMAKI 2.0」という団体です。石巻のために工房や宿泊施設などを開設し、地元から大いに感謝されています。
その復興バーが、7月19日までの期間限定で銀座に出店し、これまた大入りの盛況。私なんか3回も飲みに行き、高校の同級生と会い、訛りが出まくりでした。
この復興バーを最初に石巻で立ち上げたのが、松村豪太くん(40才)という青年で、彼が東京でも初日の店長を務めました。スタッフが揃いのTシャツを着ていて、結構オシャレなのです。
実はこの店、約1か月の営業期間中、マスターは日替わりでやることになっているのです。だから石巻の同級生に「今日、店長やるから来てよ」と呼ばれては、日参したというわけです。
復興バーは石巻の地酒はもちろんですが、つまみ類が非常においしいです。特に「生ほや」は絶品でした。その形状から「海のパイナップル」と呼ばれるほやですが、東京で食べると、塩分が多くて別の食べ物という印象です。
復興バーで食べた生ほやは、子供の頃、石巻で食べたほやと同じ味。甘み、苦み、辛み、酸っぱさ、塩辛さの五味が全部入って、実に不思議な味がします。機会があったら、ぜひ石巻のほやを食べてみてください。
ほかに「しめサバ和風マリネ」とか「復興サバ味噌煮」などがおいしかったです。なにしろ、東京にいる石巻関係者が来店しますから、変なものは出せません。石川啄木じゃありませんが「ふるさとの 食べ物懐かし 復興バー 人ごみの中に そを食べに行く」って感じでしょうか。
この復興バー、実は昨年も銀座でやっており、年に一度は都内のどこかで開催予定です。そもそもなんで復興バーをやるようになったのか?
それは石巻関係者同士の出会いの場を設けたかったからだそうです。実際、私も普段会わない地元の人に、気軽に会うことができました。東京にいながら石巻の情報を得ることができるのです。
※女性セブン2014年7月31日・8月7日号