人でにぎわう小吃街、梅ジュースや肉まんなど、手軽に食べられる物も手に入る。
いきなりだが、虫を食べたことはあるだろうか? セミ、蝶、カブトムシ等の類のことだ。日本では一部の地域を除き、それほど一般的でない「昆虫食」は、タイや中国、アフリカなど世界各地で見られる食文化のひとつ。筆者も国内外でセミやコオロギなど、様々な虫にチャレンジしてきた一人だ。
筆者が虫を食べたのは、北京でも屈指の繁華街、王府井(ワンフーチン)の小吃街だ。大きなデパートや有名ブランドの店が立ち並ぶメインストリートに比べ、小吃街は細くて、ごちゃごちゃとしている通りだ。
小吃(軽く食べるもの)の名の通り、食べ物の屋台と、おみやげの店が並び、観光客でごった返す様子は日本の縁日とよく似ている。
日本の縁日との違いは数多くあるが、最も違うことのひとつが、ところどころで見かける「昆虫串」の店だ。メニューはセミ、サソリ、バッタ、などの虫をはじめ、イカや豆腐などの普通に食べられるものや、変わったものでは、ヒトデやタツノオトシゴなども置いてある。
虫はひと串に4匹刺してあり、それが店先に大量に並べてある。ちょうど、日本の縁日の屋台で、あんず飴が並べられている様子がそれに似ていて分かりやすい。この昆虫串、サソリに至っては体を串が貫通しているにもかかわらず、足がウゾウゾと動いていて、活きが良い。苦手な人が見れば、きっと卒倒する光景だろう。
若干、および腰になりながら、店のおっちゃんに「ひと串ちょうだい」と頼むと、まだ動いてるそれを手に取り、煮えたぎる油の中にポーンと放りんだ。数分後、揚がってきたそれを口に含み、勇気を出してひと噛みすると…、意外と美味しい。食感はドロッとしてるかと思いきや、小エビの唐揚げのようで甲殻がパリパリしてている、味は薄いカニのようでクセが無く淡白だ。
最初は口にするのを躊躇してしまう昆虫串だが、一匹食べると慣れてしまい、あとはスイスイと平らげてしまった。
筆者はサソリの他に、コオロギやセミ、ワームという細い紐のような虫も食べたことがあるのだが、どれも見た目を除けば普通に食べられる味だった。
実は、昆虫食は、国連食糧農業機関(FAO)にも注目されている。少ない資源で生産でき、高タンパクで栄養価に優れる食材として、食料不足の解決策としてFAOより報告書が発表されたのだ。英国でも「Royal College of Art」と「Imperial College London 」のふたつの大学が合同で昆虫食普及の研究を進めていたり、東京でセミを捕まえ、調理して食べるイベントが開催されるなど、「昆虫食」は少しずつ注目されはじめている。ちなみに、サソリは東京の某チェーン居酒屋で唐揚げが50円、イナゴは渋谷の某居酒屋で佃煮が450円で食べられる。
正直、ゲテモノ扱いだと感じた北京の昆虫食だが、十数年後にはごくありふれた食材になっているのかもしれない。
(文・鈴木雅矩)