中国の「改革・開放の総設計士」といわれ、1970~1990年代にかけて最高実力者として君臨したトウ小平氏(1904~1997年)の唯一の男の孫、トウ卓棣(たくてい)氏が中国籍と米国籍を持っているのではないかという「二重国籍」疑惑が持ち上がっている。米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「博訊(ボシュン)」が報じた。
卓棣氏は現在、広西チアン族自治区の副県長を務めているが、中国では中国以外の国籍をもつ者は公務員になれないという規定があるだけに、ネット上では「トウ小平の孫だから、二重国籍を持っていいことにはならない。政府は卓棣氏が米国籍を放棄したという証明書を提出させるべきだ」との憤りの声も出ている。
卓棣氏はトウ小平氏の5人の子どものうち、二男のトウ質方氏の長男。トウ質方氏が米ニューヨーク州のロチェスター大留学中の1985年に米国で生まれており、米国籍を有していたのは間違いない。
北京の中国筋が明らかにしたところでは、これまでも卓棣氏の二重国籍問題は話題になってきたが、卓棣氏は3年前に米国に旅行した際、米国パスポートを使って入国したことが最近分かっている。さらに、中国に入る際には中国パスポートを使っており、にわかに二重国籍疑惑が浮上したというわけだ。
米国の法律では二重国籍保持者は18歳から25歳の間に、どちらかの国籍を選ばなければならない。卓棣氏は現在29歳なので、すでにどちらかの国籍を放棄したはずだが、中国と米国のパスポートを持っていたことで、二重国籍を保持している可能性が高くなっている。
トウ小平氏は生前、「私の孫はいま米国公民だが、彼が中国に戻ってくれば、中国公民だ」と語っている。この言い方は、「中国に戻れば米国籍を捨てるべき」ととれるが、あるいは「二重国籍でも、中国にいれば問題ない」ともとれる。とくに、中国は一党独裁体制の国だけに、幹部子弟は特権的に二重国籍が許される場合も考えられる。
これについて、ネット上では「卓棣が米国パスポートを保持していることは賢明だ。中国政治は残酷だけに、今後、幹部の子弟が糾弾されるという不安定な政治状況にならないとも限らないからだ」との声が出ている。
このほか、「薄熙来(無期懲役刑で服役中)が復活すれば、卓棣はアメリカのスパイとして処刑されるだろう」などという不穏当なコメントもあり、いずれにしても、卓棣氏の二重国籍問題に批判的な意見が多いのは間違いない。