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「昔より酒に弱くなった=肝臓機能低下」は本当か 専門医解説

 40代、50代のサラリーマンが酒席に集えば、だいたいこんな話になる。

「最近、めっきり酒が弱くなってさぁ……。若い頃の3分の1も飲んでいないのに、すぐ寝ちゃったり、悪酔いしたりする」

「俺もだよ。ちょっと飲んだだけで翌日が辛い。どこか体調に問題でもあるのかなァ……」

 体力や記憶力と同様、「酒量」の増減を健康のバロメーターと考える人は多いだろう。最近酒に弱くなったのは重大な病気の兆候ではないか、と不安になるのも無理はない。しかし、いたずらに恐れる必要はない。「酔い」を科学的に学べば、年を取ると酒に弱くなるのは多くの場合、「ただの加齢現象」だとわかるはずだ。

 アルコールを分解する臓器が肝臓であることは広く知られている。そのため多くの人々は「酒に弱くなった」=「肝臓の機能が低下している」と考え、肝臓の不調を疑ってしまう。

 しかし中年までは、肝臓が原因で酒に弱くなることは稀だという。東海大学名誉教授で、肝臓病学、アルコール医学などが専門の松崎松平・医師がいう。

「肝機能の大きな低下が見られるのは60歳以降で、それまではアルコールの分解速度は年齢によって大きな差がありません。つまり、40代、50代のサラリーマンが酒に弱くなる理由は、通常は肝機能以外にあると考えるべきです」

 肝臓以外の原因とは何か。それを知るには、まずはアルコール分解のメカニズムを知る必要がある。

 口から体内に入ったアルコールは胃で2割が、小腸で8割が吸収される。それから血管を通って体内を巡回しながら、繰り返し肝臓で分解される。

 実は、この2割の吸収を担う「胃」の老化が、酒に弱くなる原因のひとつと考えられている。アルコール症全般の臨床研究を行なっている久里浜医療センターの松下幸生・副院長がいう。

「胃の粘膜には、肝臓と同じアルコール脱水素酵素が存在しており、アルコールの一部は肝臓だけでなく胃でも分解される。しかし、加齢とともに胃の粘膜が薄くなり、酵素自体が少なくなってくる。胃のアルコール分解が悪くなるため、肝臓のアルコール分解速度に違いはなくても血中アルコール濃度が高くなってしまうのです」

※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号

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