警察庁の統計では、ストーカーと被害者の関係は「配偶者(内縁・元含む)」と「交際相手(元交際相手含む)」が6割を超える。その多くが別れ話をめぐるトラブルだ。
ストーカーの被害相談などを行うNPO「ヒューマニティ」理事で『「ストーカー」は何を考えているのか』(新潮書籍)の著書がある小早川明子さんは、ストーカーは「一人でいることの弱さ」と 「自己中心性」を併せ持つと指摘する。
「自分の中に孤独に対する弱さがあるので、好きな女性と離れることに非常な苦しみを感じる。一方で自分を中心に物事を考え、『自分は悪くない』と被害者意識を持つ。ストーカーの心理的背景には必ず被害者意識があります。あまりに強い痛みが生じると『なぜ、ぼくを傷つけるんだ』と相手を逆恨みするようになり、強力な攻撃性が生じます」(小早川さん)
典型的な例が昨年10月、三鷹市の高校3年の女子生徒(享年18才)が元交際相手の無職・池永チャールストーマス被告(21才)に殺害されたストーカー事件だ。ふたりの交際は約1年で破局したが、池永被告は手紙やメールで「会わないと死ぬ」など執拗に復縁を迫った。
身の危険を感じた女子生徒は池永被告と一度面会した後、彼からの電話を着信拒否にした。この行為がさらなる引き金を引いた可能性がある。
「ストーカーは人生に対する強い不安があり、安心を過度に求めます。交際中から相手を監視し、相手が逃げ出すと、さらに攻撃性を強めて恐怖で相手を支配しようとする。その段階で突然、相手から遮断されると一気に恨みを募らせて相手を破滅に追い込もうとする危険性があるんです」(小早川さん)
拒否されるほどストーカー行為はエスカレートし、池永被告はついに女子生徒の自宅に侵入して凶行に及んだ。
法政大学文学部(犯罪心理学)教授の越智啓太さんは、加害者がヒマ人かどうかが意外な分岐点であると言う。
「過去のストーカー殺人事件を調べると、犯人が無職であるケースが多い。他にやることもなく暇だと相手への恨みが頭の中でぐるぐると駆け回り、“自分の人生をすべて賭けて死刑になってもいいから殺してやる”と思い詰めるようになる。暇かどうかは意外に大切なポイントです」
※女性セブン2014年7月31日・8月7日号