相続税の大増税まで半年を切った。最大の特徴は「基礎控除額」が大幅に減額されること。妻と子供2人が相続する場合、これまでは相続財産が「8000万円」以下なら課税されなかった。その基礎控除が40%カットされ、「4800万円」となったのだ。
都内では半数以上が申告対象者になるが、有効な対策を講じている人は少ない。中でも高齢世代はじっくり時間をかけた相続税対策に取り組むことが難しい。だが、この世代は資産を持つ親から見て「孫」や「ひ孫」が多くいることが多い。それを最大限に活用するのが「住宅資金贈与」と「教育資金贈与」による節税である。
孫やひ孫がこれから住宅を買おうと考えている場合に役立つのが、「住宅取得等資金の贈与の特例」という制度だ。三菱UFJ信託銀行執行役員・トラストファイナンシャルプランナーの灰谷健司氏が解説する。
「20歳以上の孫やひ孫(子供もOK)に対して、最大1000万円まで住宅取得資金の贈与が非課税になるものです。『受け取る側の贈与年の合計所得が2000万円以下』『贈与の翌年3月15日までに、もらった全額を使って住宅を取得または増改築などをする』などの要件がありますが、直系の孫やひ孫であれば何人でも使えるので、現預金などの財産が多い人は活用したい仕組みです」
非課税枠は一定の省エネルギー対策か耐震性能を持つ住宅の場合が「1000万円」、それ以外の住宅が「500万円」となる。
昨年スタートして大きな話題になった「教育資金一括贈与」もこの世代にはメリットが大きい。30歳未満の孫やひ孫の教育資金として贈与すれば、1人につき1500万円まで贈与税が非課税になるものだ。ひ孫などに今からプレゼント(贈与)しておけば相続時にはその分、資産が圧縮されて相続対象額が少なくなる。
信託銀行をはじめとした金融機関にひ孫など受け取る人の名義で預け、受け取った側は学校の授業料や入学金、受験料などの領収証を金融機関に送付して口座から引き出す。もらったお金の使い途として認められる支出は、入学金や授業料だけではなく、「部活動費」や「学習塾の月謝」「ピアノ教室」など幅広い使い方が認められている。ただし、もらった人が30歳までに使い切らないと残ったお金には贈与税がかかることにも留意したい。
こちらも孫やひ孫なら何人でも贈与することができる。仮に6人のひ孫に1500万円ずつ贈与すれば、相続対象額は一気に9000万円減る。
この2つの制度についてもう1つ注意しておきたいポイントなのは、期間限定であるということだ。「住宅資金贈与」は今年12月31日までに贈与する必要がある。「教育資金一括贈与」は2015年12月31日までとされているが、政府は2~3年の延長を検討している。
※週刊ポスト2014年8月8日号