統一球が導入された2011年から不振に陥り、昨年オフに巨人から追い出される格好でフリーエージェント(FA)宣言をし、中日に移籍した小笠原道大(40)。今季、代打の切り札としてチームに欠かせない存在になっている。スポーツライターが話す。
「正直、復活は厳しいと思われていました。3年前、37歳という引退を考えても何らおかしくない年齢からスランプになった。かつて、その状態から40歳で復活を遂げた選手はほとんどいません。普通の選手であれば引退を選択するし、実際、巨人からは戦力外通告に近い形でのFA宣言となった。
それでも、日本ハム時代、現役をともにした落合博満GMに請われて移籍。やはり、球界随一といわれる落合GMの眼力は、衰えていませんでしたね」
前半戦終了時で、代打率3割5分3厘と高い数字を残し、7月1日のDeNA戦からは代打で6打数連続安打を放ち、1986年・谷沢健一、2000年・種田仁の球団記録に並んだ。
「プロ野球の歴史の流れを考えても、この成績は価値があります。昔は先発完投が当たり前の時代。『代打の切り札』と呼ばれる選手は、先発が疲れてきた終盤の7~9回頃に登場していた。それが今では先発投手は100球程度で交代し、その後はセットアッパーやクローザーが登場する。しかも、150キロを悠々と投げてくる投手も少なくない。
それでも、『代打の切り札』の役割は、昔と変わっていません。終盤の試合を決める場面に登場し、結果が求められるわけです。要するに、昔以上に『代打の切り札』は厳しい状況になっている。
そのなかで、小笠原は結果を出している。7月1日からの6打数連続安打も、内容が素晴らしい。DeNA・三上朋也、巨人・マシソンというクローザーや、広島・前田健太という球界を代表するエースからもヒットを放っているし、9回に先頭打者として同点の口火を切るヒット、7回に逆転2点タイムリーと、その質も一級品です」
時とともに変貌を遂げるプロ野球界において、これまた昔では考えられない40歳になっての復活劇。不惑のバットマンは、まだまだ魅せる。