教育ビジネス大手・ベネッセの顧客情報流出が大きな話題となっている。1件数十円というのが個人情報の相場のようだが、これはあくまでも一般的な名簿業者に出回るものだ。実はもっと高額でやりとりされている「裏ルート」の個人情報もある。詐欺に利用することを前提で作成された「やられ名簿」と呼ばれるデータである。詐欺グループの手口を知る人物がいう。
「『やられ名簿』とは、過去に悪徳商法や詐欺の被害に遭ったことがある人をリストアップしたものだ。訪問販売、通信販売、高額リフォーム詐欺など、その内容はバリエーションに富んでいる。これらは1件100~200円程度で売買されることが多い」
最近では、さらに手口は巧妙化している。詐欺グループに近い名簿業者が、この「やられ名簿」に「大手企業退職者」「地方公務員退職者」「高額納税者」「マンションオーナー」など一般の名簿業者で売られている情報を組み合わせ、独自にスクリーニング(選別)したリストを作成している。
「単なる『やられ名簿』だけでは、『カネをふんだくれると思っていたのに、実はスッカラカンだった』という二度手間が多くなる。そこで“打率”と“打点”を上げるために、金持ちであることを裏付けるデータの中から、『やられ名簿』にも名前がある人物を割り出す。
さらに、国勢調査を騙ったり、福祉事務所などを装って高齢者に電話をかけ、『ひとり暮らしか?』『財産や相続について心配事は?』『認知症の症状は?』などと尋ねて情報の精度を上げていく。中には、『介護施設見学経験者リスト』という、介護関係の協力者から情報提供があったとしか思えない独自の名簿を持っている詐欺グループもあった」(同前)
こうして作成されたオリジナルの名簿の中でも未使用のものは、詐欺グループ間で「一番名簿」とか「生名簿」と呼ばれ高額で取引される。
「通常の名簿業者から手に入る名簿では、詐欺に引っかかる“打率”はせいぜい5~10%。しかし、スクリーニング済みで未使用の『生名簿』なら、成功率は4割にもなる。このような名簿は1件あたり5000円~1万円、100~200件をまとめたもので100万円のカネが動くこともある」(同前)
悪徳業者は個人情報をあの手この手で狙っている。個人にとっても企業にとっても対策は急務である。
※週刊ポスト2014年8月8日号